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第42回香港和僑会


第42回

プライスウォーターハウス 駒形 洋紀氏

第42回香港和僑会

開催日

10月17日(金) 19:00 ~ 21:30

開催場所

日本人倶楽部

参加者数

30名

第42回香港和僑会

◇ルールの違う海外の会計で困ったらまずやるべきこと

実は前から悩んでいたことがある。「経営者にとっての実践的な会計知識はどうやったら習得できるものだろうか?」と。

“会計”は語学、IT、に並んで現代のビジネスマンに必須科目。わかっちゃいるけど、だからといって今更、学生に交じって簿記の学校に通っても海外起業家としての実践的な知識が身につくとも思えない。ではどうすれば…。

========

会場に入るといつもと様子が違う。

各席には問題と解答用紙が配られている。セミナーというよりは試験会場のよう。

事前に教室形式とは聞いていたが、まさかテストまであるとは…。

講義が始まるや否や15分間のミニテスト。問題に目を通す

『なーんだ。簿記三級レベルぐらいの仕分け問題か。これなら何とか。』と安心したのもつかの間、

『なになに、「但し商品勘定は総記法で記帳すること」』

『総記法ってなんだっけ?』『え~とこれは貸し方??』

たちまち頭に(冷)汗が…。

必須科目の割にビジネスパーソンの会計知識のレベルは実に千差万別。それこそ入門クラスから会計のプロ並みな人までいる。レベルの幅の広い聴講者を一様に満足させることは至難の業。万人受けするテーマなど本当にあるのだろうかと思って今回の駒形先生の講義に臨んだがさすがは和僑会で講演が3年連続で続く人気だけのことはある。毎回、毎回、趣向を凝らした講義はいつも斬新。受講前の期待をいい意味で裏切る。また香港という土地柄もあり香港はもちろん中国の会計の相談も多い。香港在住の海外起業家にとっては心強い相談相手である。もちろん日本にも精通しているのでいわゆる日本脱出組はばかりでなく日本に本社がある法人からも厚い信頼を得ている。

毎回テーマの選びのセンスの良さにも感心させられた。駒形講師が今回スポットを当てたのはずばり「仕分け」。「経営者こそ自分で仕分けをやってみよう!」

*第27回『行列ができる会計相談所』2007/7/20議事録はこちら↓ 

http://www.wa-kyo.com/report_wakyo_0027.html

*2006年9月第17回「経営者必修!香港・華南の会計・税法について」という

テーマでご講演された。

仕分けは一見すると単純な貸し方と借り方への振り分け作業だ。しかし実はこれがとても奥深い。

傍で見ていると非常に理路整然としている勘定科目。しかし「この金額はどの勘定科目につけようか?」世の中のことはいつもはっきり白黒つけられることばかりではない。

今回の特別講義はその意味で経営者の会計の弱点に的を絞った短時間で満足度の高い講義だった。さすがは現役の会計士、資格試験対策の先生と違って日々現役の経営者の駆け込み寺として経営者の本音の“困った”が生のデータベースとして頭の中で常に最新データにアップデートされているのでかゆい所に手が…。

「忙しくて会計をまかせっきりにしている経営者の方もいらっしゃるかと思いますが、間違っても構わないので、まず自分で鉛筆を持って仕分けをやってみる姿勢が大切。経営者が仕分けを理解しようとすることがとても重要です」

経営者が会計の理解を深める一番手っ取り早い方法は「実際に経営者が自ら会計をやってみること」

ここまではだれしもすぐに思い至る。だが『会計は専門知識が要求され、いきなりは無理…』などとついつい尻込んでしまう。そして「記帳(仕分け)は専門家にまかすのが無難」と会計を避けてしまう。

「そうか!会計ルールだって毎年のように変わる。間違ってもいいから仕分けを自分の頭で考え試行錯誤してみることが結局は理解を深める一番の近道なのか!」

惨憺たるミニテスト結果ではあったが「経営者が自分の頭でまず仕分けを考えてみることが何より重要。」という大切な考え方をわずかな時間で叩き込まれ(?)ました。

今回の気づき:「困ったらまず仕分け。」会計で何か困ったことがあったら専門家に泣きつく前にまず自分なりの仕分けを考えてみる」(相談するのはその後)

議事録作成の裏話をひとつ。

「ミニテストの件はずいぶん迷ったけれど結局、割愛せざるを得なかった」と「拙速で候」さん。

経営の分野の中でも会計は「これ一冊を習得すれば基礎はOK」といった定番本が多い。けれど、ここでいう習得とは単に読むだけではない。実際に鉛筆と電卓を使ってひとつひとつ問題に当たり自分のものに出来ればという話。一冊を習得するのに数か月、場合によっては数年かかる。今回の講義はいわばこの数カ月かかるべきことを1時間半に無理やり凝縮し疑似体験させるという駒形先生ならではの荒技。逆にいえばこの様子を何とか文章に表そうとすると1冊の会計本ぐらいのボリュームになってしまうだろう。(それでも臨場感の再現は難しい)今回の割愛判断は極めて妥当と納得させられた。

余談だが、人間とは不思議なもので、テストとなるとついつい張り切って(?)真剣に取り組んでしまう。今回のミニテストもライブならではの不思議な緊張感があった。(別に点数がよくてもご褒美が出るわけでもないのだが)これも駒形演出のにくい妙技。

駒形先生ありがとうございました。

次回の講義も期待しています。

今回参加できなかった方はぜひ次回へ!

(ここまでの文責 上野)

以下速記録

■日時:2008年10月17日(金)於:日本人倶楽部

■講師:プライスウォーターハウス 駒形 洋紀氏

■講演テーマ:『今からでも遅くない会計の基礎講座 その1』

昨年一昨年を振り返り俯瞰してみると、「客先が潰れそうだがどうすればよいか?」、「分社化するにはどうすればよいか?」、「生産基地をどのようにすればよいか?」などの相談を良く受けた。

あまり色んな事を考えずに正攻法で筋を通すのが最も良い結果になる。新聞記事を読んで分かったような積りになっているときがあるが深く考えると実は余り分かっていないと言う事もあるだろう。今回は基本に立ち返って簿記の基礎講座を行ないたい。

(例題は割愛)

会社は何を行なうところか?会社はイタリア、オランダが発祥の地といわれている。大航海時代に金持ちが冒険家に金を出し、冒険家はその金でインドなどへ行き香辛料や茶などの商品を持ち帰り商品を売却して出資してくれた金持ちに金を渡す。と言う事をやっていた。だから、会社は金を入れるところから始まる。

◇転がすほど増える現金

現金がどう化けていくのか?Cが現金、Nは商品

C=N→C‘=n’→C“=C”→・・・・・・

現金で物を買い、自分でない誰かに渡しもう一回現金に変える。

例えば100万円で買ったものが150万円になる。

その現金でまた物を買い、自分でない誰かに渡し、現金に変える。

これを何度も繰り返していく。

先ほどの大航海時代の例では故郷に帰る前に2回、3回と回した方が得になる。

お金を商品に化けさせる事によって利益を生んでいく。

この航海が1回限りであった頃は簿記は必要なかった。現金出納帳で十分まかなえた。

簿記ではお金を商品に変える事を“取引”と名づけた。1回取引を行なう毎に1枚の伝票が作成するルールになっている。そしてその伝票がどんな取引に基づいて作成されたのかが分かるように伝票にはSupporting Document(確証)を添付するルールになっている。

伝票のスゴイところは1枚ごとにめくれること、取引があれば何かが残る事になっている。

借方と貸方の区別だが言葉に意味はない。理屈ぬきに左が借方で右が貸方と頭から覚えるしかない。借方の“り”が左にはらい、貸方の“し”が右にはらっているので、そのように覚えるのもいいだろう。

現金を元入れして開業した場合は借方に現金いくらいくら、貸方に資本金いくらいくらと記入する。増えるのは借方に記入する。

さて、船乗りが港に帰ってきて儲けを分配したところで、また金を集めてその船乗りに金を渡さなければならない。それであれば継続的に運営できるように預けっぱなしにしておき、その代わりに出資した金がどうなったのかが分かるようにした方が便利。ここから資本金の考え方が生まれたといわれる。

投資家が船乗りに出資する時に契約書を作る。船乗りが帰ってくると転がしただけ儲けが乗っかっている(ハズ)だがそれまで待てないせっかちな人達がこの儲かる“権利”を勝手に売買し始めた。権利を渡したり担保にしたりした。これが株式の始まりになる。世界最初の証券取引所はオランダに設立された。

会社と言うのは会社法と言う法律よりも先に出来ている。日本で最古の株式会社は日本郵船と言われているが会社法よりも先に会社が出来ているが、定款などきちんと整った形でスタートしている。実体があってそれを管理する方法が考え出されて簿記が生まれた。

最近の取引は複雑化しており商品をどこのタイミングで買ったかが分かりにくくなっている。クレジットカードのレシートにもよく見ると日付が2つある。一つは実際に購入した日、もう一つはbookingした日。信用のある会社は物を早めにもらえる。試用販売などは物を先に手に入れて使うことが出来る。自分たちの商品になってから購入の伝票をあげる事が出来る。このようにバリエーションが増えてきたのが現在の会計と言える。

よく決算というが決算は伝票の集計作業の事を指す。

集計が終わった物を総勘定元帳(G/L)と呼ぶ。

この集計が終わらないと会社がどうなっているのか判らない。

伝票、証拠書類、G/Lが揃って簿記はできたと言える。

左と右に同じ数字を入れると、仕入れた商品を高く売るので最後に金額が合わなくなる。そこで、最後に致し方なく伝票を入れるわけだが、利益がそこに現れる。

ここで仕入れた商品が全て売れていれば問題はないが在庫が残っている場合、実際には取引が行なわれていないが、行なわれたと看做(みな)して伝票を切る。これを棚卸と言う。在庫があった方が計算上利益になる。

伝票にはあまり神経質になる必要はない。とにかく取引と思ったら伝票を書いて欲しい。本日の講座を聞いていただいて「何でこんな伝票を作っているのか?」と興味を持っていただけるとありがたい。

Q1:在庫はない方がよいと考えていたが、会計ではその逆になるのだろうか?

A1:在庫を抱えていることを寝ていると言うが、在庫の回転率は速い方がいい。最初に話をした商品を買って現金にすることで利益が出るのだから回転が多い方が良い。株を買う人はそこを見ている。在庫がないようにして現金を一杯にすると在庫回転率は上がる。そうするテクニックもある。商品の仕入れ伝票を遅く上げて売上伝票を早くすることである。ルールは毎年変わっているので会計士はそのつばぜり合いをやっている。

Q2:今回時間切れで話が出来なかった部分について簡単にご紹介願いたい。

A2:今回は商品を介在する取引に付いて話をしたが、サービス業の場合どうなるのか、また、減価償却の考え方、についても講義を進めたかった項目である。

Q3:米国が時価会計を取り止めると言う報道があったが、個人的な見解を教えて欲しい。米国は日本がバブルの崩壊で苦しんでいる時に時価会計を押し付けたにもかかわらず、自分がサブプライム問題で危機に陥ったら取り止めようとしている。ズルイのではないか?

A3:新聞報道も特定の現象や情況に対して意図的に攻撃的な報道がなされる場合があり報道が常に正しいのか疑問を持っている。時価会計にしてもどこまでが時価会計にしなければならないのか?と言う問題もある。

(速記録 by 拙速で候)

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