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第40回香港和僑会

August 1, 2014

 

第40回

フレッド・カン法律事務所 律師 武藤錬太郎氏

第40回香港和僑会

開催日

8月1日(金)   19:00 ~ 21:30

開催場所

日本人倶楽部

参加者数

40名

 

 

 

第40回香港和僑会

『そうかそういうことだったのか!』

個人的な期待をはるかに上回る名講演だった。

講演中に投げかけられたひとつの質問からいろいろな気づきを得た。

武藤先生問うていわく。

「訴訟ではっきりするのはいったい何だと思いますか?」

従来和僑会の夜は経営者で成功した方の経営者の考え方などのお話が多い。『しかし今回は弁護士の先生のお話。経営というよりは“実務的”な色合いの強いどちらかというと苦手なビジネス法のお勉強の話だろう。』とあまり期待していなかった。(失礼!)しかし、それは勝手な誤解だったようだ。武藤先生のお話は、ありがちな法律の専門家の重箱の隅の議論ではなく、まさしく日々、海外で仕事をする経営者・あるいは当事者のために構成されたお話だった。

『何がはっきりするか?』改めてそう問われると・・・。“訴訟”は一大事。いわば専門医に大手術をお願いするようなもの。そうなったら生兵法は怪我の元。門外漢はまな板の鯉。おとなしく専門家にお任せするしかないと。しかしそれは大変な思い違いだったと今回、気がつかされた。

「訴訟では自分の権利ははっきりします。しかし仮に勝訴したからといって相手が本当に賠償金の支払いに応じるかどうかは全く別の問題。いってみれば権利がはっきりするだけの事。それだけに訴訟になったとしても専門家任せにせずに飴と鞭をうまく使い分けて相手と落とし所をさぐる水面下の交渉も怠らないことがきわめて重要です」確かに犯罪の裁きと違って示談というカードもある。

特に訴訟は段階を経るごとに弁護士費用など雪だるまのように膨れ上がることも。敗訴すると香港では負けたほうが勝訴側の弁護士費用まで負担しなければならないのでより大変。

また、仮に、勝っても相手が負け逃げして判決に応じた金額を払ってくれないことも。いわれてみれば、どちらに転んでも権利と義務が明確になる以外なんの保障もない。強制執行という手もあるが差し押さえる財産がなければこれも「無い袖は振れない」上告となればさらに時間もかかる。

『そうか!今までは単に訴訟≒専門家任せと自分は捉えていたが実は訴訟ひとつとってもいろいろな段階で高度な経営判断をすべきなのか!』

訴訟になっても、まな板の鯉をきめこまず、費用や期間をにらみながらあらゆる段階で水面下の交渉を続けるべきである。

経営している以上、日常的に問題は付き物。しかも問題は往々にして複雑に絡み合っている。その複雑な方程式を解くのがいわば経営者の仕事。今まで訴訟という選択肢は最悪最終の手段と思い込んでいたがそうではない。この非常に複雑に入り組んだ問題を解く方程式のひとつ。経営者は細かい条文は覚える必要はないが、そういった法律に対する考え方や弁護士などの専門家に丸投げではなく向き合う姿勢が必要。「経営者はビジネス法とどう向き合うべきか」今回の講演はそんな気づきに満ちていた。

「それにしても…」

お金の面だけでとらえれば弁護士はお客が訴訟などをどんどん持ち込んでもらったほうがお金になる。今回のようなアドバイスは経営者にとっては親切だが弁護士業にとってはむしろマイナス。弁護士がこんなことを話しても一文のとくにもならない。医者が「むやみに薬など飲むな」といっているのに等しい。

貴重な考え方を教えてもらって感謝と同時に“赤ひげ先生”のように儲からないことのないように人事(ひとごと)ながら心配になった。

それ以外のお話も実に欲張ったメニューを短時間で説明しきるありがたい限りの構成だった。

そのさわりだけ紹介すると

香港ではうかつな接待は立派な有罪!?

滅多に認められない即時解雇(退職金も不要)に持ち込むとすれば?

「え?親族でも相続が受けられないことも!!」日本と大きく異なる相続法

 めでたくアパートを契約。でも、うっかりすると複数のエージェントから手数料を請求されることにも…。

罪の重い痴漢。ちょっと触れただけでも…。

人にはちょっと聞けない(?)被疑者になった勾留された時の心構え。

などなど香港で働き暮らすには抑えておきたい内容ばかり厳選。普通のセミナーなら各テーマで1時間以上かけてもおかしくない内容。それを一刀両断の無駄のない明確な解説でズバリ解説。1時間ちょっとに凝縮して見せたのには改めて脱帽。忙しい経営者の方々にはうれしい限りだ。

今回は「お盆で里帰り。残念ながら参加できない」というメンバーの方々、本当に残念でした。せめて拙速で候さんのすばらしい速記で雰囲気だけでも感じていただければ幸いです。

武藤先生ありがとうございました。それからこのような話の聞ける和僑会という場に改めて感謝。

(ここまでの文責 香港和僑会上野)

I.接待はワイロになるのか? 

Chapter:201にある“Bribery“という単語がワイロという意味。ワイロ禁止の条項。1~5に分かれていて、ビジネスマンが注意すべきなのは第2項。

登場人物が3人居る。1番目はany person・・・A、2番目がany agent・・・B、3番目がprincipal・・・C。AがBに対してCのビジネスに関して利益供与を申し込むと犯罪になる。と書いている。だから接待は犯罪になる可能性がある。

Agentと言うのは代理人、Principalは本人。この2人の関係にany personが割り込んでいる。

文中にAdvantageとあるのが利益だがその意味合いは幅広い。金銭、サービス、雇用の提供、権利行使、権利行使を止めさせる、と言うことまでを含んでいる。

Agentは代理人。公務員、他人に雇われている人、他人のために働く人。会社にとって従業員はAgentになる。

Entertainmentはその場で消費される飲食の提供。一緒に食事をする分には犯罪にならない。ゴルフや贈答品は該当する可能性がある。

Permissionは利益供与の前に許可していれば犯罪にならない。トップ同士のゴルフは犯罪が成立しない。

II.対従業員

雇用契約は事業主と従業員で締結される。

1. 守秘義務2)競業避止

引き抜き禁止条項が会社の利益を守る。

2.には判例がある。

チムサッチョイの美容院がヘアスタイリストと結んだ雇用契約で1年間は香港域内でヘアスタイリストをしてはならない。と決めていた。余りにも重いので“6ヶ月以内、チムサッチョイで“に変更された。

もう1件は弁護士のパートナーの事例がある。全世界で弁護士をしてはならないことになっていたが、これも重すぎるので“香港域内“に変更された。

3.解雇

解雇に理由は必要ない。だが、ルールはある。通知と支払いである。1ヶ月前に通知をするか1か月分の給与を支払うか。契約で期間を変更することも出来る。

相談を受けた場合、「当日まで本人に解雇する情報が伝わらないようにする、通知を渡したら私物を纏めるが資料に触らせたりコンピュータに近寄らせないよう立ち会わせる」よう回答している。解雇された腹いせに資料の持ち出しやデータ削除などの嫌がらせをされる可能性があるからだ。

即時解雇と言うのもある。この場合は支払いも不要になる。しかしめったに認められない。労働契約違反だからだ。遅刻がひどい場合、書面で警告を出し、本人からは誓約書を出させる。そういった手順を踏んで枚数が溜まるってから即時解雇を行う。

解雇の支払い項目は、長期服務金(永年勤続)か解雇保証金(人減らしの時)があるがどちらか一方だけでよい。

III.契約法上のルール

香港はすべて判例、制定法としての契約法はない。

契約:2当事者間で合意されたもの。法律で拘束されるもの。権利/義務が発生し、裁判所を通じてさせる。金銭が多い。

Consideration(約因、対価)という概念はよく理解する必要がある。一方的な約束では強制力はない。約束に強制力をもたすには約束に対する対価を準備しなければならない。

対価なしで強制力を持つ場合も例外的に存在する。その場合『Deed』と言う書面を作らねばならない。

主な例としては保証書がこの形式で作成されている。

この『Deeed』にもルールがある。約束の受け手から対価をもらうこと。第三者では成立しない。経済的対価に見合っていなくてもいい。(たとえば大家がいいなら家賃は安くてもいい)公的義務の履行(裁判所で証言をする)契約上の義務を履行するのに新たな対価は必要としない。

IV.相続

日本と大きく異なっている。

日本では死んだら自動的に相続が行われる。特別な行為は必要ない。これを裏付けるのは戸籍制度。

香港は規定はあるが戸籍制度がない。出生証明書、婚姻証明書だけだ。死ぬと相続人の間で代表者を決め、遺産管理人を選任する。遺産管理人は裁判所へ行き、死んだ人に成り代わりプラス/マイナスの財産を処分する。遺産管理人はすべての責任を負っている、例えば隠し子が居て遺産相続で不満がある場合は遺産相続人を相手取って裁判を行う。銀行は遺産管理状がないと財産を渡さない。遺産管理状はきわめて重要な役割を果たしている。

日本の遺産分割協議書では銀行は財産を渡さないので注意が必要。

隠し子が香港に居ない場合に保険会社から保証を差し入れ(遺産の3%前後)隠し子は保険会社を訴える。香港ではCashがないと遺産相続が出来ない。

V.香港の法律手続きは二段階に分かれている。

事実の主張・証拠による証明を書面で交換する段階と裁判所で関係者が一同に会し尋問する段階。

前段階で事務手続き、書類作成、書類送付を行う人をSolicitorと言う。日本の司法書士や弁理士などの仕事を兼ね備えた役割を果たす。人数も多い。

次の段階で裁判所で弁論を行う人をBarristerと呼ぶ。Solicitorが依頼人を紹介するケースが多いので前段階の法律従事者に客引きを意味する英語Solicitorと言う名前がついたといわれる。

交渉の道具として、訴訟と和解がある。訴訟はムチで相手にプレッシャーをかける。和解はアメで少し負けてあげる。

訴訟で巻けたら相手の費用まで負担しなければならない。数ミリオンになるのでリスクは大きい。

訴訟を起こす時は供託金(被告側の費用)を裁判所に積み立てなければならないので金を寝かせる覚悟が必要である。供託金の金額は裁判官の主観で決められる。

訴えられたら、防御手段として延長などの時間稼ぎ、反訴(同じ事件で相手を訴える)など努力をして和解の道を模索する。

VI.フラット契約(部屋の賃貸契約)

仮契約をして本契約を行うが、部屋の内見をする際に不動産業者は書類にサインを取り付けるはずだ。これはその部屋に決めたらコミッションを支払うことを約する内容になっており、同じ部屋なのに複数の不動産業者から内見した場合は両方からコミッションを請求される場合もあるので、部屋を探す時は同じ部屋の内見がないかどうか、もしも、同じ部屋があったら削除するなどの注意が必要。

家具のリストもなるべく詳細にする。下見の時が新品で入居時は中古だったと言うケースも実際にある。

VII.お手伝いさんの契約

移民局に標準のフォームがある。

条件が決まっており

お手伝いさんのVISAを発給しなければならない。

お手伝いさんをShareしてはならない。貸し出してもいけない。等々

IIX.被疑者になって警察に捕まった場合は何も言わないのが無難

警察は48時間以内に釈放しなければならない。

痴漢は罪が重い。ちょっと触れただけと思っても、3万ドルの罰金が科せられた実例もある。

Q1:Flatを所有している。香港外に居る息子と娘に相続を考えているが、会社名義にして会社を息子と娘に相続させようと考えている。

A1:Flatを会社の名義にすればFlatの相続は必要ないが会社の相続は必要となる。香港は生前贈与も税金は掛からないので、そうしてはどうか?

 

Q2:生前贈与の手続きについて教えて欲しい。

A2:会社ならカンパニーセクレタリーに書類を書いてもらい、息子にサインしてもらう。

 

Q3:従業員の解雇について、長期服務金、解雇保証金からMPFを差し引きたいが、従来はMPFはそのまま従業員に渡していた。こちらの都合で差し引く方法に変更しても問題ないか?

A3:MPFを差し引くかどうかは事業主の権利なので、自由に決定してかまわない。事前に相談を受けた場合は差し引くようアドバイスしている。

 

(速記 By拙速で候)

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