【開催報告】2026年7月15日(水)ランチ和僑会ディスカッション「北上消費は止められない」だからこそ香港の小売業・飲食業が考えるべきこと
- 7月15日
- 読了時間: 5分
毎週末になると、多くの香港人が深圳へ向かいます。一昔前であれば、「中国本土へ買い物に行く」というイメージでしたが、今ではその目的は実にさまざまです。レストランで食事を楽しみ、美容院へ行き、歯科医院で治療を受け、ショッピングをして、そのまま帰宅する。こうした「北上消費」は、一時的なブームではなく、新しいライフスタイルとして完全に定着しつつあります。
今回のランチ和僑会では、「北上消費が止まらない状況で、香港の小売業と飲食業が生き残るためには?」というテーマでディスカッションを行いました。参加者は経営者やビジネスパーソンを中心に、それぞれの経験をもとに率直な意見を交換しました。議論を通して感じたのは、「北上消費を止める方法」を考えるよりも、「香港ならではの価値をどう生み出すか」を考えることの方が、はるかに重要だということでした。
「安いから深圳へ行く」は、もう昔の話
ディスカッションの中で印象的だったのは、多くの参加者が「深圳へ行かない理由が見つからない」と口をそろえていたことです。
例えば、ある参加者は「夫婦で毎週末深圳へ行っている」と話していました。歯科治療は香港の約10分の1の費用で受けられ、しかも技術レベルも高い。日本料理店も味のクオリティが高く、価格も香港より安い。さらに、スマートフォンでQRコードを読み取れば注文から決済まで数分で完了する。移動時間を考えても、それだけの価値があるというのです。
ここで重要なのは、「安いから」という理由だけではないということです。
価格に加えて、
品質
利便性
サービス
満足度
これらすべてを含めた「体験価値」が評価されているのです。つまり、香港の飲食店や小売店が競争している相手は、価格だけではありません。お客様が感じる「体験全体」と勝負しなければならない時代になっています。
香港のお客様は「サービス」に満足しているだろうか?
今回のディスカッションで最も多く挙がった課題は、「サービス」でした。
参加者からは、
「サービスレベルは高くないのに10%のサービスチャージを支払うことに納得できない。」
「店員とのコミュニケーションがほとんどない。」
「注文や会計がもっとスムーズになればいいのに。」
そんな声が数多く聞かれました。
もちろん、香港には素晴らしい接客を提供しているお店も数多くあります。しかし、お客様の期待値は年々高まっています。深圳やマカオで受けられるサービスを知ってしまった今、「昔からこうだから」という理由だけでは選ばれなくなっています。飲食店は料理だけを提供する場所ではありません。そこには「人」がいます。店員の笑顔や会話、気遣いが、お客様の満足度を大きく左右します。AIやデジタル化が進む時代だからこそ、「人にしかできないサービス」の価値は、これからますます高まるのではないでしょうか。
日本企業から学べること
ディスカッションでは、香港で人気の日本企業の名前も数多く挙がりました。
サイゼリヤ、スシロー、シャトレーゼ。
いずれも共通しているのは、「高いコストパフォーマンス」です。
「この価格で、この品質なら満足できる。」
そう感じてもらえる企業は、景気が厳しい時代でも支持を集めています。さらに印象的だったのが、スシローと「ちいかわ」のコラボイベントの話です。一定金額以上の利用者だけが限定グッズを購入できるキャンペーンには、多くの人が集まり、店舗には長蛇の列ができたそうです。
これは単なる販促ではありません。お客様に「体験」や「楽しさ」を提供しているのです。
料理だけで勝負する時代から、「また来たくなる理由」をつくる時代へ。
この発想は、業種を問わず参考になるのではないでしょうか。
地元のお客様をもっと大切に
もう一つ印象的だったのは、「これからは地元密着型の店づくりが重要」という意見です。
以前は観光客を中心に繁華街へ出かけていた人たちも、最近では住宅地周辺で買い物や食事を済ませるケースが増えています。さらにUber Eatsなどのデリバリーサービスも日常生活に定着しました。
つまり、お客様の生活圏そのものが変わってきているのです。だからこそ、「立地が良いから来てもらえる」という考え方ではなく、「地域のお客様に何度も選んでもらえる店」を目指すことが重要になります。
常連客との信頼関係は、価格競争では決して手に入りません。
行政と民間が一緒になって変わる必要がある
今回のディスカッションでは、企業努力だけでは解決できない課題も数多く挙がりました。
例えば、
高騰する家賃
オンライン決済環境の整備
安心してネット購入できる仕組み
観光客が利用しやすいサービス
などです。
特に興味深かったのは、「マカオは以前よりサービスが大きく改善し、中国本土からの旅行者が増えた」という意見でした。行政の取り組みと民間企業の努力が重なれば、街全体の魅力は大きく変わります。
香港にも、まだまだその可能性はあると感じました。
北上消費は止まらない。でも、香港には香港の強みがある。
ディスカッションの最後、多くの参加者が共通して話していたことがあります。
それは、「北上消費の流れそのものを止めることは難しい。」という現実です。
私自身も、その流れを無理に変えようとするよりも、「香港だからこそ味わえる価値」を磨くことの方が大切だと感じています。価格だけでは勝てません。家賃も簡単には下がりません。
しかし、
「この店だから来たい。」
「このスタッフに会いたい。」
「ここで過ごす時間が好き。」
そんな理由は、どんな時代になっても人の心を動かします。
サービス、体験、コミュニケーション、安心感。
これらは簡単には真似のできない、香港のお店が持てる大きな強みです。
今回のランチ和僑会では、多様な業種の参加者が本音で意見を交わし、非常に有意義な時間となりました。一つの正解があるテーマではありませんが、こうした対話を重ねることで、新しいアイデアやビジネスのヒントが生まれていくのだと思います。
皆さんは、「北上消費が当たり前になった時代」において、香港のお店が選ばれ続けるために最も必要なものは何だと思いますか。ぜひ、皆さんのご意見もお聞かせください。






















コメント