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第38回香港和僑会

June 1, 2014

 

第38回

肇英実業 川副哲社長

第38回香港和僑会

開催日

6月1日(日)   19:00 ~ 21:30

開催場所

日本人倶楽部

参加者数

40名

 

 

 

第38回香港和僑会

◇知識の次に来るもの

「いや今回の話の内容には本当に驚いた。」

質問にたった初参加の聴講者の一人が開口一番そんな感想を漏らした。

初参加といっても、すでに海外歴30年のベテラン経営者である。その人が今回の講演を聞いてなぜそんなに驚いたのか?

「とにかく内容が濃い。お話しの中で出た人件費や税金その他の数字、そして中国最新情報は、単に情報が豊富なだけでなく非常に正確。中国に関してこれだけの情報を、もしほかで得ようとしたら、時間を使ってたくさんのセミナーに出席して多額のお金をはらわなければならないと思う」と。

講演の原稿はこちら↓

たしかに、中国に関するクオリティの高いセミナーの値段は安くない。しかしそういったセミナーの講師であれば知識は豊富かもしれないが「天は二物をあたえず」。反比例的に実務には疎い人の場合も多い。

したがって高額セミナーに参加すれば中国ビジネスの知識はえられたとしても、果たして今回のような実務に直結した知恵が得られるかどうかは別の話だ。

それ以上に今回のセミナーは・・・。

講師の川副社長は、和僑会の副会長。また20年以上もの間続いている日本人の気軽な情報交換飲茶(ヤムチャ)の会、八日会も主催している。気軽といってもこちらも良質な情報が得られる場という意味ではクオリティは高い。

「川副社長が本当に話したかったのは、惜しみなく出したその豊富な知識の“先”にあるものではなかったのだろうか?」ふと思った。

そういえば自分を含め、駆け出しの起業家やコンサルタントは、とかく情報や知識を武器と思いがちだ。なにかといえば「それはノウハウなのでちょっと簡単には言えません」「これは、コンベティターに知られると困る大切な・・・」「この知識を習得するために高額のセミナーに参加して本も何十冊もよんだ。」などといって知識を出し惜しんだりする。たしかに知識にも価値はある。

しかし一度聞いたらわかってしまう薄っぺらなノウハウでは所詮、末永い商売はできない。

ネタがばれたらおわりである。

「知識の先にあるビジネスの肝とは何だろうか」川副社長の話をききながら、そんなことをしきりに考え続けた。 

おそらくそれは、“商売の仕組みをつくるノウハウ”ではないだろうか?あるいは雇われ経営者ではなくビジネスのオーナーとしての心がまえ??

和僑会を貫く理念でもある「共存共栄、相互扶助、社会貢献」

助け合い、高めあい、そして社会に喜んでもらえる仕組みが出来て初めて商売は末永く繁栄する。この仕組みづくりも難しい。

「知識の先にあるものは果たしてなんだろうか?講演中に提供される圧倒的な情報量と熱気に知恵熱のようなものを覚えながらも同時に深く考えさせられる。尾を引く講演だった。

今回のご講演では単に知識の提供ばかりでなく、聴講者が考える場も周到に用意されていた。

会場で川副社長から聴講者に投げかけられたのが以下の質問。

私にとっては頭に汗をかく格好のテーマばかりだった。

あ。自分が外国で起業して経営者になった時、社員の活性化としてどのような事をやるか?

い。外国で外国人を雇用して事業を伸ばすには、どのような事に留意しなければならないか?

特に人事管理、人材開発の面から。

う。外国で経営する日本人企業家に取って必要な リーダーシップは何か?

 「ひょっとすると・・・」

「知識の先にあるのは自分の頭で考え抜くこと!?」

川副社長ありがとうございました。   (ここまでの文責 上野)

第38回香港和僑会 講演会 速記録

講師:肇英実業 川副哲社長

中国華南における事業環境と事業機会について次の順番で話したい。

1)1992年に設立したテクノセンターとその生い立ち

2)中国の経営環境が悪化しているがどう乗り切るか

3)陽江工業団地のコンセプト

4)香港における今後のビジネスチャンスは何か?

5)こちらから皆さんに問いかけしたいこと。

1992年に設立したテクノセンターとその生い立ち

まず私の経歴から説明しよう。

1982年に宇部興産の駐在員として香港に3年駐在し東京に戻った。1992年香港に戻ってから雇われ社長を2年経て肇英実業を設立した。今年で20期になる。

同社は最初に恵州に工場を作った。4社で25%ずつの出資比率。業種はプラスチックの成型と着色。恵州に工場を建設した理由は投資者のひとりが恵州の小金村に工場を持っていたため。工場に至る道路は未舗装のデコボコ道でシンセンから当時は6~9時間も掛かるかなりの田舎であったが地名が縁起がいいので内心期待していた。鎮長の説明では高速道路もすぐ作るし、水力発電が豊富なので電力供給についても懸念には及ばぬとのことであった。実際は高速道路が出来るまで3年掛かったし、電力についてはしょっちゅう瞬電するありさまだった。

この時、「役人の言うことを鵜呑みにしてはいけない」と学んだ。また出資比率が25%ずつ4人だったことも失敗だった。経営の主体が誰にあるのか、責任が誰にあるのか、意思決定者が誰か分からなくなる。結局、誰もリーダーシップを取らないし発揮も出来ない。

テクノセンターがその後移った普吉は今でこそシンセンのすぐ隣だが昔は3時間掛かった。

テクノセンターができたきっかけは八日会に遡る。

1980年に三田の香港進出に伴い部品メーカーであるVENDORも一緒に進出してきた。

Vendorを会員とするミタの協力会が八日会の始まりだった。

八日会で中小企業向けに支援センターを作ったほうがよい。と言う話が持ち上がり、肇英がそこに入って立ち上げることとした。

立ち上がりは面積の7割が肇英だったが、今では50社が入居し肇英の割合は15-20%まで相対的に低下した。

税関問題、労務問題など進出企業が直面し解決すべき問題を解決し4年で機能を整えた。

テクノセンターがうまくいった理由はテナントとWIN-WINの関係が築けたこと。進出する中小企業1社1社がCOSTをばらばらに負担するよりも纏めたお陰で共通する経費を分担することが出来、テクノセンターもテナントも利益が出る体質になった。

株主30名でスタートしたが、今では250名に増え資本金4100万HKD、収入20億HKD、利益1.5億HKDの実績になっている。総投資22億HKDが4年で完済して非常に健全な経営になっている。

株主の中に日本政府の関係者がいて、それを利益供与だとして朝日新聞に叩かれた事がある。その方は1株HKD25,000だけ出資されていたのだが、出資するときに

「テクノセンターのように中小企業の海外進出を支援する事業は本来日本政府が率先して行うべきことなのに民間がよくぞその代わりを果たしてくれた。私も少ないですが1株だけ入れさせてください。」と言う理由で出資されたものだった。

それを毎年10%、15%と配当を出すものだから、朝日新聞がそんな高配当を出せるはずがない、川副が江副(リクルート事件)になった。と言われたのですぐさまホームページに反論を掲載したものだ。

時代の変化とともにテクノセンターの新たな切り口を考えなければならなくなっている。

テクノセンターが来料加工の面倒なことを一切請け負いテナントがその中で作る事に集中するという仕組みがWin-Winに機能した。しかし中国政府は今、この来料加工を廃止する方向で動いている。これにどう対処するか?この枠組みを見直すのか?という問題に直面している。

入居しているテナントの意識も変化している。人民元で稼ぎたい。そのために中国国内販売の出来る独資企業のステイタスを得てテナントを出る。

華南は賃金もUPするし電気代もUPする。環境が悪くなってきた。

主な課題について整理したい。

1. 人民元為替レート

今年すでに5%切り上がっているが、年末までに10%きりあがるだろう。昨年は7%きり上がった。来料加工の売り上げ通貨はUSDかHKDだが、賃金や電力家賃などのCOSTは人民元。

生き残るためには中国国内販売をして人民元で稼ぐか支払いもUSDかHKDにする。

2. GDP成長率

今年は減速するだろう。だが、それでも中国は悪くなっても10%近い成長率がある。

一方インフレ率は8%までは確認できている。石油も値上げ、電気も値上げ、8%では収まらないだろう。2桁いくのではないか。これに伴って賃金も更に上がるかもしれない。 

3. 税金問題

今年から統一税制が導入された。

従来は中国企業は33%(国税30%+地方税3%)、外国企業は15%(国税のみ)しかも二免三減で優遇されていた。これを統一して一律25%にしようというものだ。設備輸入の関税の免除も難しくなった。免税でなければ輸入するだけで30-40%掛かる。

外資企業誘致の優遇政策は東南アジア諸国で導入されている。フィリピン、台湾、韓国では保税加工区。ベトナム、タイ、マレーではBOI。中国で外資優遇税制が無くなると大変だ。

華南からすでに香港企業の2割が出て行ったといわれている。

新労働法によってCOSTが20%上がるといわれているのがきっかけとなった。

先々週発表されたがシンセン特区外で最低賃金が750元から900元に上げられた。20%の上昇率になる。実際は残業代もあり20%upだけでは済まない。残業90時間を入れて3,000元/月/人と計算すると中国の人件費は60万円/年、日本の田舎だと300万円/年。ひと頃は中国の人件費は日本の1/30だと言われていたが、いまでは1/6にまで縮まっている。これからは自動化、IT化、多能化、TPSの導入、周りの環境を整備し定着率をあげる。などが、必要となるだろう。

4. 諸費用

物流費、消耗品費のCOSTが上がっている。客の隣で仕事をするのが一番よい。

5. 来料加工に未来はない

だが、この政策転換のお陰で広東省は輸出が3割減少した。政府も分かってきただろうか?

6.環境問題

環境局が工場にしょっちゅう来る。広東省で環境ビジネスができるかもしれない。

日本に香港の環境ミッション団に同行して行ってきた。

香港で環境補助金15万HKDまで受けることが出来るのをご存知だろうか。これは香港にある日系企業も活用できる制度だ。

7. 自動車産業

今までは急激な伸びだったが、今年からは着実な伸びになってきた。

中国の自動車生産台数は今年で1,000万台を達成するだろう。自動車産業が成長すると鉄鋼業や化学工業などの重工業が育つ。自動車部品をやろう、金型、メッキなどは中小企業が強い分野である。 

8. 複写機

中国で伸びたのは部品が集約されているため。大手複写機メーカーは華南に居座ると言っている。ただ、価格の安いインクジェットプリンターを製造するブラザー、キャノンなどは工場をベトナムに移す動きをしている。

複写機こそ日本のOnly Oneである。

9. 家電

東芝、松下は華南で富裕層をターゲットに売り出しておりまだ伸びると見ている。

10.競合

どうやって勝つか?

広東省の人口は登録人口だけで8,000万人、これに流動人口が2,000万人とも6,000万人とも称されている。一人当たりのGDPはUSD5,000を超えている、ちなみにシンセンはUSD10,000と言われている。生き残ることが出来れば将来はバラ色であろう。

日本は72年から85年までの間に急速に成長した。

11.グローバル化

EPA、FTAなど国際化の流れがあり、大手はこの流れに乗ろうとしている。大手についていくのが中小企業である。ベトナム、タイへの進出も考えていかねばならない。

12. 中国国内販売

香港企業にはCEPAの制度が使える。これを活用してはどうだろうか。

13 食品加工と資材供給

食の安全と言う問題がある。中国にしてもいい食材を求めるようになった。食品に使用される梱包材も必要になる。

西日本エコタウンを訪問したおりにリサイクル事業を見学した。ここには日本の白物メーカーが相乗りしている。九州一円で出されるプラスチックをシンセンでペレットにして東芝の中国工場が使用している。

物づくりはアジアの時代になっている。日本では製品も作っていない。日本にはリサイクル法が制定されている。日本では出来ないリサイクルをアジアでやる。

14.バイオプラスチック

ムギワラ等食べ物ではない素材で出来ないだろうか?しかも生育は日本よりも早い。

15. 人材開発

経営の三要素はヒト・モノ・カネだが、ヒトさえ居ればカネは後から付いてくるのはここに居る人たちはよく承知のはず。人材ビジネスが成り立つのではなかろうか。

そこでテクノアカデミーを設立し林社長に社長をお願いした。日系企業向けの人材育成をここで行う。

肇英実業の経営理念、使命、行動規範、社会的責任についてご参考までパワーポイントの最後に添付した。

 

(質疑応答)

 

Q1: 環境ミッションでは日本の技術と香港企業のマッチングを行われているわけだが、マッチングの難しさに特に職場についてのご感想を伺いたい。また、川副社長はサラリーマンを長年経験されてからの起業だが、オーナーとサラリーマンの違い、仕組みづくりなどをお聞かせ願いたい。

A1:環境ミッションの難しさについては政府と言うのは「箱物を作ったらそこでお仕舞」、と言うところがあること。香港政府もそうで、参加者が目標の30名集まればその時点で成功と言う評価を下す。後のフォローは何も考えていない。

もっとも日本側にしたところで同じで途中まではいいのだが、フォローが出来ていない。大企業の場合はまだいい、香港に支店がありそこでフォローしてくれる可能性が残っているから。ところが、香港で起業している中小企業の場合はそれがない。

そこで受け皿として堀社長のエコバンク構想などに期待を寄せている。和僑会のような組織でもいい。環境技術を必要な人に情報を共有化させる仕組みが必要だろう。

陽江に環境技術センターを作ると言うのもここをモデルルームにして次のビジネスにつなげたいと言う思いがあってのこと。

11月に香港で環境エキスポがある。第二弾の環境交流会と位置づけている。この会には安倍元総理も来賓として参加される予定と成っており地銀、企業を後押しできるのではないかと期待している。

次にサラリーマンとオーナーの一番の違いは責任をすべて自分で負うところだ。お金は全部自分が背負うことになる。ところで中小企業の場合サラリーマン経営者はオーナーでもないのに銀行から保証させられることもある。50億円を借りて社長、取締役3人全員が保障させられたこともある。これはかわいそうな話だ。保証のための保険は給与を上げることぐらいしかない。中小企業のオーナーとなると初めのうちは融資も受けられないので自分の金でやるしかない。真剣で深刻になる。

オーナーの醍醐味と言うのは年に一回くらい、ものすごい額の金が口座に入ることぐらい。もっとも大半のお金はそのあと1時間ぐらいで出て行く。それまでのつかの間がオーナー 

としての楽しみと言えば楽しみになろう。

川副社長からの問いかけ

陽江では86万トンの漁獲高がある。10%ぐらい加工しているが、加工の割り合いを高めたい。

主にすり身になるが地元政府からそういう要望がある。

広東省の自動車部品メーカー向けに金型、メッキ工場を誘致したい。

テクノセンターで出来ないことを陽江でやりたい。

食堂の運営。メシがまずいとしょっちゅうクレームを聞かされている。広東省には日系企業が5,000社あり100万人を雇用があると推定している。食材加工センターを作り日系企業や日本料理屋に食材を供給したい。

野菜工場を作りたい。近隣農家に技術を移転し安全な野菜を供給する。

人材開発センターを作り、大学、高校を卒業した生徒を集め教育を施し陽江テクノセンターの入居企業向けに供給したい。

九州にタチバナ町という町があり、そこは竹の産地で有名になっている。竹は抗菌作用もありプラスチックに混ぜてゴミ袋を作る。中小都市でビジネスの連携ができないだろうか。

香港でどんなビジネスが出来るか考えたときにサービスの高度化が思い当たる。

自分は5Kと称しているが

教育産業:香港には6つの総合大学があるがいずれもレベルは高い

観光業:中国から2,000万人の観光客がおとずれる。マカオと一体となれば新たな展開が出来るのではないか

健康産業:金持ちの高齢者向け

環境ビジネス:人口700万、今まではゴミを埋め立てていたが、これからは出来なくなる。

カルチャー産業:日本の文化、食、アニメ、ファッション、今後も期待できるだろう。

ファイナンシャルセンターとしての香港を活用できないか。香港がハブとなりアジアに投資する。香港に口座を持ちたがる日本人も増えてきている。これらの流れとうまく連携できれば相乗効果も上がるであろう。

福祉産業:高所得者向けのサービスはあるが低所得者向けのサービスがない。

日本は品がいい。文化的伝統芸能ではない何かがあるだろう。

COST面からアジアに進出してきた。中国しかり、ベトナムしかり、タイしかり。次はどこか?インド、イスラム、アフリカになるだろうか。その架け橋になるのもビジネスチャンスである。

武田社長の発言

香港は住み心地がいい。日本食も多いし日本人も多い。

ビジネスとしては中国を舞台に展開するのが自然ではないか。

世界中の情報が香港なら入ってくる。税制面で有利なのもある。Up to dateな情報交換も出来る。

中国人がまだ気づいていない事をビジネスとして展開できるのではないか。

例を挙げると、広州の駅前に大きなマンション群がある。日本人駐在員が200人ぐらい住んでいる。一月1,000ドルぐらいでそこの管理をしている日本人が居る。買い物や部屋掃除、オーナーとの折衝などをしてくれる。

それから、中国の日系企業の工場を訪問すると便所が汚いのに驚く。工場の責任者に聞いても悩みの種だとこぼしている。それならば、日系企業の工場を対象に便所をきれいにするサービスを提供する事業を行っても成り立つのではないか。

筒井社長の発言

珠海で社会福祉学校の設立を考えている。日本では福祉事業をやりたい学生が少なくなっている。少子高齢化の波も関係しているのだが、マスコミの報道の仕方も悪い。仕事は大変で給料が安い。そんな風に報道すれば悪循環に陥って当たり前だ。日本の若者に期待できなければ中国人、フィリピン人に日本に来てもらえばいいではないか、と考えるだろうが、門戸を狭くしている。肝心の中国人やフィリピン人にしたところで大学を出て日本語をマスターしたのに色々と条件が厳しい。そこまでするくらいならカナダやオーストラリアに行ったほうがましだと考えるのは道理である。

珠海に日本人向けの老人ホームを作り、日本に留学経験のある医師に珠海、陽江の病院に招聘する。老人ホームには珠海日本語学校の卒業生に勤務してもらう。珠海ならば環境もよいし年金で暮らすことが出来る。香港をベースにしていろんなことが出来るのではないか。

(速記録by拙速で候)

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