特別講演会
アジア太平洋ルネッサンス協会議長 角田識之
特別講演会
開催日
9月30日(火) 19:00 ~ 21:30
開催場所
日本人倶楽部
参加者数
30名
特別講演会
◇摂氏400度のオアシス
冒頭の師匠こと筒井和僑会長の挨拶が振るっていた。なんでも今回の講演は師匠を訪ねるつもりで香港に来た角田先生に無理にお願いして実現の運びとなったわけだが会合で初対面の二人が言葉を交わしたのは帰りがけに二言三言の挨拶程度だったとか。
しかしなぜかその後何年もずっとお互いに印象に残っていたらしい。
たった二言三言でずっと繋がる縁。そんな縁づくりの秘訣がもしあればぜひ知りたいものだ。
以前の講師、緒方玲子先生の不思議な出来事をふと、思い出した。
講演の帰りがけエレベータに緒方先生と乗り合わせて降りてくる間のほんのわずかな時間のこと。ふと横を見ると隣の欧米紳士と会話が弾んでいる。
以前からの知り合いには見えない。
「素敵なスティックですね」と紳士
「ありがとう。アフリカ製のもので・・・」と緒方先生。
え?こんなわずかな時間で親しくなれるもの?「やはり達人は凡人と違う」と思ったものだ。今回の角田先生と筒井師匠の一件もしかり。武士の世界で言えば“構え”を見ただけでお互いの力量がわかるといったところなのだろうか。
それにしても今回の講演もまたしてもいい意味で大いに予想を裏切られた。
お題からして「感動経営」。何しろ
「トップは400度の熱意で語れ。それでもリーダーたちに伝わるのは半分の200度。それをリーダーたちが会社員に伝えるとまた半分の100度。それでも社員が100度ならお客様に50度の熱意が伝わる。考えてみてほしい。トップが200度しかなければお客様には25度これではあまり熱くない。
そう語る感動経営の伝道師コンサルタント角田先生。ご自身のお話も掛け値なしに400度以上だった。講演はDVD講演を聞きながら目頭を抑える人もちらほら。(上映も交え暗くてよく見えなかったが結構いたようだ)
「それではさぞや暑苦しい話と思いきや・・・。」
ご本人は大声で話すわけでも、お涙頂戴の名調子でもない。きわめて涼やかに話す。しかし語っている内容(志)はでかい。
ふと、「ひょっとすると諸葛孔明という人もこんな涼しげな語り口だったのでは?」などと考えながら聞いていた。
涼やかな語りくちと対照的に感動経営の伝道師の成果はすごい。感動を経営に取り入れることにより今まで世界一企業を6社輩出した。うち4社が台湾企業。そして残りのうち1社が中国人の経営する日本企業。すなわち6社中実に5社が中華系企業という勘定になる。中国人は感動経営と相性がいい!?
情緒的な日本人以外は感動経営は取り入れられないのではと言う先入観があったのでこの話は新鮮だった。
「ということは香港でも感動経営は取り入れやすい!?」
のちにある人いわく。「台湾人は日本人的な情緒が通じる。歴史的背景から本土と教育が違ったせいかもしれない。一口に中国人といっても香港とも中国ともまったく違う」どうも中国人という大きなくくりでは語れないようだ。
今回の講義ではまず熱気を体感し、しかも事例紹介の映像の数々で視覚にも訴える。特に朝礼風景を撮ったビデオなどまさしく百聞は一見にしかず。果たして文章でこの心地良い摂氏400度のオアシスをどう表現したものか?
今回も議事録班泣かせ(?)の贅沢な1時間半だった。やはり和僑会はライブで聴くに限る。またしても速記録のスペシャリスト「拙速で候さん」の苦労が続く。
今回感動のグルメの話を聞き終わっての気づき。
「感動は人と人の触れ合いから生まれる。それは”一言の挨拶”から始まる」
「はっ」と気がついた。
そういえば緒方先生もにこやかに「ハロー」とエレベータに同乗した紳士に挨拶をしていた。
そうか!挨拶から会話が始まったんだ!」
「感動への第一歩はまず笑顔の挨拶から」人様を感動させると構えるととたん敷居が高くなるが笑顔の挨拶からなら今日からでもできる気がする。一人一人に心のこもった挨拶を心がけよう。
角田先生ありがとうございました。
(文責 和僑会 上野)
和僑会 臨時特別講演 2008年9月30日
テーマ:“感動経営”~新潟発、台湾経由、上海開花
講師:アジア太平洋ルネッサンス協会議長 角田識之
感動経営とは17年前に生まれた概念である。
今回の講演では
感動と経営は結びつくのか?
小が大に勝つマジック、
NO.1企業を生み出すマジック、
小さな投資で高い成果を上げるマジック
について話をする。
日本経済は戦後の高度成長、バブル経済を経て市場縮小型不況と言う第三ステージに立っている。人口は減少し2050年には1億人を切るとまで言われている。貧富の差も広がり、資源も奪い合いの様相となり高騰している。こう言う時期こそ竹のようなしっかりした節作りが必要となってくる。
事業活動を例えるならば柄杓(ひしゃく)で汲んだ水を桶に移す作業と言えるだろう。水は顧客で桶が会社、いくら水を移す作業をしても桶に穴が開いていて水が漏れたのでは何にもならない。ドラッカーも「事業とは顧客の創造である。」と言う言葉を残している。
ここで皆さんに質問です。ラーメン屋に電話で予約をしたところ「(席があるかは)そんなもん、来てみんと分からん。」とつっけんどんな態度を取られて電話を切られたとする。あなたならどうするか?ちょっと挙手してください。
それでも絶対に行く
二度と行かない
電話をもう一度掛けて文句を言う
店に直接行って文句を言う
店のガラスに石を投げる
5番に手を上げた人が居なかったのでホッとした。しかしラーメン屋の電話の対応が悪いのに怒った客が店に踏み込んで危害を加えると言う嘘のような事件が実際に新聞に載っていた。
2006年7月24日の新聞に千葉県のラーメン屋に車ごと突っ込みかわいそうにお客が巻き添えで骨折までした事件が報道されている。
犯人は店主の電話の対応に腹を立ててやったと供述している。
顧客の評価は概ね次の通りである。
A.事前期待<事後評価⇒感謝、感激、感涙
B.事前期待=事後評価⇒満足
C.事前期待>事後評価⇒不満、苦情、去る
客はそれぞれ求めるもの(期待)が違っている。先ほどのラーメン屋の話しかり。ある老舗のお菓子屋さんに行った人が「店を出てから見えなくなるまで見送りしてくれなかったのにがっかり」というような期待のずれなど人それぞれ。顧客の“こ”の字は個人の“こ”と思えば良い。
その時は客は満足しても、満足するとその上を求めるものだ。
毎日の仕事はこの評価の繰り返しである。不満を持つとバランスが崩れる。これが怖い。人間は10人に不満を言うと崩れたバランスが“=”(イコール)に戻ると言われている。つまり口コミと言うのが心のバランスシートを“=”にする作業である。逆に感動させてもらうとこの心のバランスを戻すため5人ぐらいの人にその話をして恩返しをしたくなる。100人のうち一人ぐらいは恩知らずもいるが…。
日本の企業の多くが免責の技術サービスまでしか行なっていない。文句の出ない、顧客に満足してもらえるレベル。だが、それを超えるところに感動の技術サービスがある。免責の技術サービスは8合目辺りだろう。
◇感動経営マジックの要点
ある日だけでなく「毎日」、「いつでも」感動する。
ある特定の担当者だけではなく「会社全員のチームプレー」である事、あの担当者がいる、いないで評価が変わってはいけない。
個別に対応する事
販促費はダウンする。新規顧客を獲得するには従来顧客の維持の約5倍掛かる。
顧客の生涯購入価値を考えてみると、車で2000万円、スーパーでの買い物で3000万円にもなるといわれる。顧客の生涯価値は年間消費額X平均収益率X継続予測年数で求められる。
安売りの時にしか来ないバーゲンハンターと贔屓客では利益率が234倍の差が出る。満足した顧客のリピート率は10%だが、感動した顧客のリピート率は一足飛びに50%にも跳ね上がる。
感動経営ではこう言う領域をマネジメントする。
「たかが」と「されど」が顧客満足度を変える。そのためには従業員の目線をどの企業も達成していない10合目まで上げる必要がある。通常経営者と従業員の目線を合わせるのに2年掛かる。
◇「そこまでやるか」--関東と新潟に拠点のあるアクティブ引越しセンターの事例
この会社の使命は「お客様のハッピーライフのプレリュードを演出します。」
営業は気付きを提案し現場はサプライズを提供する。
毎年の経営計画会議で数字の話はわずかの時間を占めるのみ。後は“Waoo! Story”という発表会。お客様のお礼状にもとづき各グループが感動のシーンを再現して競う発表とその表彰が時間の大半を占める。この発表会では優秀者が顧客が感動した場面を再現ドラマ風に仕立てたビデオを上映する。
昨年2位をとった事例のビデオを紹介する。
「新居に引越しのトラックが着くと予定外の別の引越しの業者がすでにエレベータを占有していた「これでは引越しが終わるのは夜中になるか」。客はすっかり諦めていた。しかしアクティブ引越センターは18階の新居まで階段を使って全ての荷物を手で持って運びいれてしまった。」
この話のすごいところは通常引越し会社では現場で働く人たちの半分はアルバイトということ。アクティブもアルバイトが半分居る。だが、アクティブではアルバイト扱いせずに“キャスト”と呼び、ハッピーライフのプレリュードを演出するのと同じ舞台に立たせている。だからこのような場面でもアルバイトも自分の判断でキャストとして感動を演出する。
1拠点辺り客からの感謝のハガキが100枚以上寄せられる。
引越屋のリピート率の相場は3%。だがアクティブは20%とこの業界では驚異的
「たかが○○」されど「○○」というのは実は自分が決めている。
薩摩の教えに『漢(おとこ)の順序』というのがある
何かに挑戦し、成功した者
何かに挑戦し、失敗した者
自ら挑戦しなかったが、挑戦した人の手助けをした者
何もしなかった者
何もせず批判だけしている者
アクティブは果敢に挑戦して失敗した者も表彰している。それでないと従業員は挑戦を止めてしまう。
従業員は「たかが引越、されど引越」の意気で客から「そこまでやるか」と言われるほどのサービスを提供している。
顧客の期待を一歩超えるイメージで行動を起こしている。
ゆでガエルではなく挑戦する飛びガエルたれ。
従業員にそこまで熱くさせるにはトップが熱くならなければならない。
トップが400度なら、リーダーは200度、
リーダーが200度なら、社員は100度
社員が100度なら客は50度で熱いと感じる。
引越会社でいくらまで拡販の投資するかを調べたところ
サカイ引越センターは2.5億円、アート引越しセンターで5.0億円。資金に余裕のない中小企業こそ金は掛けずに思いを掛けて欲しい。
日本の歴史を振り返ると節目節目で中小企業がトップを取っていることに気がつく。戦国時代の織田信長、明治維新、戦後の復興、全てそうだ。だから、平成でも中小企業がトップをとってもなんら不思議ではない。
小が大に勝つ秘訣は正気集団v.s.狂気集団。使命やミッションを発表して同業者に笑われたらOK。笑いものになるほどのミッションを掲げなければ差別化でもなんでもない。
成果を上がるのに2つの方法がある。
金 X やり方=成果
思い X やり方=成果
感動企業では朝礼は出陣式。
自分のやっている仕事が世界一の仕事か?を確認する。
これは朝礼だけでは身に付かない。日々のOJTが重要である。
ベーシックな行動をいくつか書いたチェックシートがあり、毎朝ひとつづつ朝礼話し合う。そして身に付いた行動を従業員が行なっているか毎週上司がチェックしている。
顧客にはアンケートハガキを書いてもらい、その内容を全社に配信し共有している。フィードバックをする時にベーシックの何番が、、、。と言う具体的な評価を行なっている。
この顧客からのアンケートハガキを基にその時に行なった仕事が数値化されて各組織に点数がつき優秀者が経営計画発表会で発表されている。
アクティブは「プロのサービス脳」を持っている。だから絶対にゲスト(=客)を責めない。不愉快な出来事があっても解決をゲームの感覚で愉快に探し出すゲーム脳を持っている。
アクティブは感動経営によってリピータ率が上がり“ちらし”の費用が半分に減少した。口コミには金が掛からないからである。
アクティブのHPは客のブログで作られている。実際に使った人たちの体験が口コミとして広がっていく。これを「電コミ」と名づけている。
◇モップの交換やメイドサービスなどを手掛ける会社の社長がアクティブ引越センターと同じ様にトライした事例。
この会社の使命は『ハッピーライフを支える最高のサポーター』
従業員はただのメイドサービスではなくお客様のサポーターと言う意識で働くようになった。
ビデオ:「あるお客は引きこもりだった。メイドが掃除に行くたびに声を掛ける。初めはまったく無反応。しかし続けるうちに少しづつ客が心を開き、ついには社会復帰への道を歩き始めた。」
上司の命令ではなく、マニュアルでもなく、客の要望でもなく、仕事に対する“プライド”から自発的に仕事をしている。お客様の心の超えに答えたい。と言う想いがエネルギーとなり、善循環となっている。これを承認してやるトップが必要。
6社中4社
◇世界一企業のひとつ――台湾のスクリューメーカーの事例
ビデオ:「家庭の事情で進学できなかった従業員がその会社に入ってから仕事を任せられ、従業員の士気が高まった。その結果、その企業は世界でトップシェアを取るほどの企業に成長した。」
台湾に感動経営推進の義兄弟がいる。その人たちと台湾での活動をしている。志の付き合いは義兄弟。
孫文が志の付き合いが大切。そうすると志/大義が成就するまでつきあいは続く。(利害関係や金の付き合いだと、金が出来たら途切れてしまう)と言う様に日本は東洋の王道文化に基づいた経営を行なうべきである。
明治・大正時代の政治家後藤新平は「財を残すは下。されど財なくんば事業保ち難く。事業を残すは中。事業なくんば人育ち難し。人を残すは上なり」と言う言葉を残しており、拝金主義の対極にあるのが人本主義。
ケネディも子供は未来からの使者であるとの言葉を残しており、現在我々が行なっている活動に最終的な判断を下すのは次世代だとわかるだろう。
感動企業となるための2年間(24ヶ月)のプログラムを準備している。大体100人前後の企業向けに考えられている。
一番最初はマインド領域。成功イメージを持つ。ロマンとソロバンを両立させるのが大切。この段階が最も重要。この段階で成功もイメージが完璧に出来るまで次の段階には進まない。
次の段階が「戦略」、「オペレーション」、そして「イズム領域」へと進んでいく。ここまで来るのにだいたい24ヶ月掛かる。この活動を始めて10年間で6社の世界一企業が生まれた。内4社は台湾企業。のこり2社のうちの1社が中国人の経営する日本企業だ。
感動経営で効果があるのは、メーカー、サービス業、下請けの順番。特にメーカは変化が大きい。
ある会社で実行されている“引き出しの三定”、定位置、定品、定量。この会社は工場環境整備世界一を目指している。ありとあらゆるところをきれいにして最近ではとうとう「スリッパのない(はく必要のないほど綺麗)トイレ」を実現し見学に来た人を驚かせている。
感動経営に到るにはそれぞれレベルがある、自社がどのレベルか自己判断して欲しい。
月商6か月分の現金を持つ・・・・・・中学
愛の経営 ・・・・・・高校
愛と感動の経営 ・・・・・・大学
感動経営は1社1業態と考えている。
上海に“一茶一坐“と言う飲食チェーン店がある。
家族的な人間関係を基礎に経営をしている。
5人単位の従業員を小家族と呼ぶ。店は中家族。
そして“一茶一坐“全体は大家族。
と家族になぞらえた組織になっている。
この“一茶一坐“で従業員がドラマ。
ビデオ:「母子家庭の貧しい母子が来店した。親子で麺ひとつだけ注文した。二人の会話を聞くと子供の誕生日らしい。母親がお金がなくて祝ってやれないことを娘にわびているのが聞こえた。スタッフで金を出し合ってバースデーケーキを買ってあげ、一緒になって子供の誕生日を祝ってあげた。」
経営者の仕事とは何でしょうか?
トップは理想(ミッションとビジネスモデル)をイメージし続けること
従業員に“伝わる化”をする
常に自分が第一号信者である
良き師友を持つ(自分の考えがストライクゾーンにあるか)
現状から考えて今から同じ事をしてナンバー1にはなれない。突き抜けたオンリー1を目指すべきである。今ある同業の会社はすべて8合目と考え自分たちは誰も行った事のない10合目に目線を上げる。
「真顔で熱く語り合える場」が必要。堂々と語り合える場。真剣で語れば実現する。
明治維新が成功したのも、長州藩の松下村塾と言う場で尊皇の志士たちが堂々と真顔で倒幕を語りあえる場があったからだ。
自分は感動立国を提唱している。既に松本市は感動都市宣言をしており、100カ所の自治体で同じような感動都市になって頂くのを目標としている。
(速記録by拙速で候)