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第50回香港和僑会

June 19, 2009

 

 

第50回

香港貿易発展局日本首席代表 古田茂美氏

第50回香港和僑会

開催日

6月19日(金)   19:00 ~ 21:30

開催場所

日本人倶楽部

参加者数

30名

 

第50回香港和僑会

◇論語と兵法

「今日の講義は覚悟して聞いてください」

はて?冒頭から穏やかではない。普段から知恵熱モノの中味の濃い講義をする古田先生の話、一応覚悟は出来ているつもりだが今回はどうも今まで以上。何しろ1時間半弱の限らせた時間に普段なら数日分の講義を詰め込むつもりだという。テーマは「華人ネットワーク」、確かに1時間半で語るテーマとしては相当でかい。

言うや否や、いきなり早口で語りはじめた。数千年前の話をしていたかと、思えば今度は100年前へ、さまざまな時代に縦横無尽にタイムスリップ。これだけ時代を飛び回る話を聞いていると「100年に一度の危機」というもの『数千年で考えれば何十回も起こっていること。なんだそれほど騒ぐことでもないか』と不思議な気持ちにさせられてしまう。

古田先生の博士号取得のテーマが華人ネットワークという。これを語らせたら右に出るものなし。いつもの”知恵熱”ならぬ眩暈を覚えるような古田ワールドへと誘われた。

眩暈は覚えながらも…

超高速で時代を駆け抜けたおかげでかえって全体像の輪郭がぼんやりと見えた気がする。それと同時に更なる疑問や興味も沸き起こって来た。

中国人を理解するには四つの違った行動規範が融合していることをまず理解する必要があるという。

①中国共産党要因

②華人ネットワーク

③儒教

④中国兵法

中国人は自己人(身内)と外人(それ以外の人)との付き合い方(関係)は全く違う。身内には策略などの兵法はご法度。商売でも身内とそのほかでは平気で差別する。そのあたりは公平(フェアネス)を重んじる西洋的考え方とは大きく異なりしばしば我々日本人は右往左往させられる。

またどこのチャイナタウンにも必ずあるのが①林(墓)②廟③会館とも

聞きながら「そもそも別格の自己人(身内)とは?」新たな疑問がわきおこる。

◇自己人は何人?

類は友を呼ぶというのだろうか。先生がすごいと話を聞きに集まる人もこれまたすごい。聴講に駆けつけた華僑起業家の大御所バーナードさんに自称、古田先生の追っかけの女性が2次会でこれまた鋭い質問を投げかけた。

「あなたにとって本当の意味で自己人(いわゆる身内)は何人ぐらいいますか?」

大成功して70歳の誕生パーティに海の見える高級ゴルフ・クラブを借りきり100人以上の香港著名人を招いたというバーナードさん。このクラスになると身内も半端な数ではないはず。

しかし、その答えは非常に驚くべきものだった。

「10人ぐらいかな?」

(え?たった・・・)

人脈というと集めた名刺の数を自慢する勘違いした輩がいるが、このクラスでも本当の信頼のおける自己人はたったの10人ぐらいという。

その一言だけでも、ものすごいことを学んだ気がして考えさせられた。

仮に身内それぞれに10人の身内がいたとしてその身内にまた10人…。

興奮冷めやらぬうちに二次会もお開き。

帰りがけにエレベータから下りてきた古田先生に講義のときから気になってしょうがないことを聞いてみた。

「華僑は食うのに困って海外に行った人も多かったはず。なのにどこのチャイナタウンでも世界各地であたかも申し合わせたように林、会館、廟などがあるのはなぜ。華人は一体何をバイブルに華人ネットワークをかくも統一的に世界に構築できたのか?」と

古田老師(先生)答えて曰く

「簡単です。彼らの支えとなったのはもちろん論語です。それと兵法。和僑会のように海外で活躍する人たちこそ論語の素読をすべきと思います」

なるほど。海外ネットワーク構築のバイブルは「論語と算盤」ならぬ「論語と兵法」。

古田先生ありがとうございました。

(ここまでの文責 上野)

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講演テーマ: 『4つのパラダイムで解く中華企業行動』

これまでアメリカにあった地力がアジアに移行する動きが更に顕著になってきた。福岡和僑会が近々九州和僑会へと発展するとのことだが、時宜に叶っていると思う。

政治にしても経済にしても重心はアジアに移りつつある。日本はそれに対応する動きが非常に鈍いように感じられる。この動きは香港にいるからこそより実感できる。香港は単に情報収集に便利と言うだけではない。情報を編集する能力にも長(た)けている。

新しいアジアの流れに日本人がどっぷりつかっているのが和僑会。理論面での協力ができればと思っている。中華企業の行動を理解する為には文化から入る必要がある。

もともと、日本人はネットワークを作るのが苦手な民族であると言われている。

上海に日本人が14-5万人在住しているのだが自分たちの中で仕事をしているのはその一例だ。上海のある都銀は千人単位で駐在員を送り込んでいるが取引先の実に99%が日系企業だという。

だが、日本人同士だけでやっていけるなどと悠長な事も言っていられなくなっている。例えば対馬から釜山に抜ける海底トンネルを作り新幹線を走らせる構想が浮上しているが、実はこの考え方は戦前からあったものである。技術水準からすると十分実現可能であったが、これまでは採算に乗らないので実現しなかっただけだった。ところが、ここにきて大陸とつながる鉄道の話が急速に現実味を帯びてきているのである。

中華企業の行動は相手によって違った表情を見せるため外からは不可解だったが最近、理論的な解明が進んできた。

いろいろな概念があるが4つの軸で理解したほうが判りやすいだろう。中国人は状況によって表情を使え分けるので、こちらもポケットの中に4つの軸を持っておけば、予想外だった相手の言動も想定の範囲内に納めやすい。

《4つの軸》

1)      国情

2)      儒教

3)      兵法

4)      華人ネットワーク

中国人を理解するには基本仮定を理解しないといけない。

我々はCORP-COMP(協調・競争)戦略と呼んでいるが、国情に対する儒教の軸、兵法に対する華人の軸が中国人の2重性を形作り4つの行動規範として現れる。中国人にCompetitionの相手だと認識されると兵法を駆使されWin-Lose(勝ち負け)の関係となってしまう。逆に仲間と認識されると儒教精神が発揮され身内同然の扱いで接してくれるようになる。

華人ネットワークと儒教は関係が深い。

特に外に広がるときに参考になる。

◇中国を変えた華人ネットワーク

「香港の返還は国情(大陸社会主義)と華人ネットワークが合体した一瞬だった。」とCITICの栄毅仁氏は述べている。彼は上海の大コングロマリットの跡継ぎだったが大陸に残っていた。そのため文化大革命の時期は例に漏れず大変な目に遭わされている。一族の多くは海外に活路を見出し、香港にも親戚はいた。その栄毅仁氏が鄧小平の時代になると「内地に華僑投資工業区を作ればどうか?」と進言しているのである。香港返還を華人ネットワークとの融合の動きと捉えた香港人は返還後について楽観していた。結果はご存知のとおり。香港は発展し中国も市場原理を導入し発展を遂げている。

中国は共産主義からほとんど資本主義と変わらないところまで社会が変わってきているがロシアや東欧諸国のように一直線で進んできたわけではなく社会主義市場経済を通過して現在の姿になっている。

『一国両制』も時期によって意味合いが変わってきている。最初は中共と香港を分ける概念だったが、今では共存の意味合いが濃くなっている。この分では2047年を待つまでもなく中国が香港化して『一国両制』は不要となるかもしれない。陰と陽、白と黒、どちらも共存させられるのが中国人の特徴である。老子と道教の影響が大きいと思われる。

“公”の中に“私”がある経済が現在の中国経済だが、実は100年も200年もまえから宗族(そうぞく)経済として存在していた。社会主義でカバーされていたのが改革開放を受けてこの30年でまた現れてきた。宗族経済とは地縁・血縁で結ばれた経済である。

現在の香港はカネ・ひと・ノウハウが集まっており中央装置になる機能を備えている。

華僑の経済史を紐解くと南宋時代にまで遡る。アラブから造船技術が伝わり、中国人が海外に進出できるようになった。明には鄭和が遠征するなど、活躍した、その後ヨーロッパ勢力が現れてからぐちゃぐちゃになってしまった。ヨーロッパが来なければどうなったか?中国はやはり自律背反して共和制に向かったであろうとの研究結果もある。一言で言えば「日本はヨーロッパが来てすばやく順応したが中国は血を流しても順応しなかった。自分を変えなかった。」と言うことができる。

辛亥革命100周年を迎えるこの2年で何が起こるか非常に注目している?方法論としての中国が再び水面下から現れてくると予想している。

米国は末期的情況を呈しており凋落は免れないと思っている。アメリカと一緒に沈んではならない。

華人ネットワークの特徴とも言える宗族経済は、ヨーロッパ勢力や共産主義で押さえ込まれ一旦は海外へ出て行った。このことが、華人ネットワークをかえってグローバルなものへと変化させた。華人ネットワークは国境を超えて繋がっているのだ。移民した華人が故郷に送金するなどの行為を行なうがこれは統計では捕捉しにくいものである。

華人の移民先は

広東系・・・米国・カナダ

福建系・・・マレー、シンガポール、フィリピン

海南系・・・マレー・インドネシア

などが主な移民先だが成功して金持ちになった華人が自分の出身地(僑郷と呼ぶ)に(錦を飾る)投資を行なうなどの形で繋がっている。

世界中どこへ行ってもチャイナタウンは存在するが、どのチャイナタウンへ行っても必ず3つのものがある。

・     会館(同郷/同姓)――身元保証、融資、職業斡旋

・     廟       ――先祖のお祠り(おまつり)

・     林       ――墓

中国から出てきたばかりの移民者には身寄りがなく部屋を借りるにも仕事を探すにも当座の生活費を借りるにも保証してくれる人がいない。(互助)会館が保証人の代わりとなってその移民者を支援する仕組になっている。活動は華人の寄付で賄われているが、サンフランシスコの会館は銀行の担保になっていてそこが活動資金を捻出している。インフラまで互助で作り上げ行政に依存していない。

華人企業の投資事業がどうなっているのか最近まで全然解明できていなかったが、上海香港銀行に残されている古い送金伝票を1枚ずつこつこつ整理するという気の遠くなるような作業をした学者の研究のお陰でようやくその全貌が解明できた。資金の流れに線を引くと海外の華人と中国が繋がりがクッキリと浮かんでくる。

海外投資をパターン化すると、まず、華人マネーの集積地が香港であることが分かる。

また、リスクの軽減を目的として投資は共同出資の形態を採っていたことも分かった。中国人は常にリスクの軽減を考えなければならない。日本人は組織に属していればあまり考える事はないが…。

海外と中国との送金ネットワークはこのように大昔から確立されていた。香港上海銀行は英国が後からきて華人の送金ネットワークのある場所に支店を出していった。中国語で僑批局というのが広東系、銀儲局というのが福建系の支店に相当する。

◇カネがカネを生む考え方

お金は例えばこのように流れた。インドネシアの華僑が郷里のスワトウに送金した。インドネシアにいる金融業者は預かった金をマレーシアに送金しマレーシアの金融業者はこの金をゴム園に投資する。1ヶ月経って30%儲けた時にスワトウに送金する。

リッパな金融行為である。

日本人の価値観はコツコツ物を作ってお金を増やす。

中国人は元手が出来たら不動産に投資し金融へと投資する。

その不動産を転がしてお金を作る。金が付加価値を作ることに抵抗感を感じない。イギリス人はこれを理解して模倣した。現在最先端の金融工学と言われているデリバティブなどの手法は全て中国ではとっくの昔から駆使されていたものだったといえる。

◇華人ネットワークは経済インフラも作っている。

地理的には香港とシンガポールを結節点とする東南アジアだが北は日本の長崎や対馬までカバーする相当広い範囲にわたる。華人ネットワークは海から広がっており、かつては倭寇が平和に海の貿易をしていたのだが、ヨーロッパ勢の出現で姿を消してしまう。近年になって歴史回帰の動きが見られ東南アジア+中国の一体化が2010年に実現するのではないかと予想している。

華人ネットワークの特徴は排他性が強い事にある。相手によって値段が変わる二重価格などは代表的な例だ。情報の普遍性を重視するヨーロッパの啓蒙主義とは全く正反対の性質を持つ。

日本も排他的な傾向があり縦型組織の“系列“があったが、戦後米国に潰された。

中国には“関係”(グワンシ)と言う横型組織がある。これは“身内”で利益を分ける組織になっている。

価格決定のあり方にも違いがある。欧米は啓蒙思想で情報が均一化した社会を目指しているから価格は市場の需給関係で決まる。対して中国は市場と組織をネットワークで結びついているので、人間関係で決まってくる。

華人ネットワークは一見、水のようにユラユラしている組織だが宗族(そうぞく)という中心がある。

華人ネットワークの三縁(血縁、地縁、業縁)

この三縁を目に見える形で表すと

血縁・・・宗族会

地縁・・・同郷会館

業縁・・・同業会館

これら三縁が有機的にむすびついているのが華人ネットワークである。

ビジネスの現場で日本人が相手だと予想できる回答が帰ってくるが、中国人だとそうでないときがある。

◇合股の概念

共同出資、共同経営が8-9世紀の中国で行なわれていた。寧波や南京から東南アジアに出かけて胡椒を買って分け前を山分けする。この考え方が“公”の概念である。

共同出資をすることでみんなでリスクを回避しながらビジネスを行なう。ビジネスになると経済になる。出資者はこのような出資を繰り返すので重層的な企業集団が形成されていく事になる。

◇日本と中国で違う“公”と“私”の概念

日本の”公“・・・”おほやけ“大きな建物や領域を意味していた。漢字が輸入されてから

”おほやけ“に似た概念を持つ”公“を当て字として使った。同じ字を違った概念に当てたことから日中での誤解が始まったと言えよう。日本の”公“には個人が含まれないし、日本語の”公“は領域を示している。公園、会社などが該当する。

中国の“公”・・・漢字の意味として所有している物を開放すると言う意味がある。個人の物を分かち合う。繋がりのある共同を意味する。公平、公正などが該当する。

日本の“公”と中国の“公”を図示すると点線の部分が“公“なる。灰色は“私”。

中国人は出資の考え方があるので“公”の中にも自分の取り分があると考えている。労役を提供しているので会社の財産の一部は自分のものだと考えている。

日本人は会社から貰った給料だけが自分の財産で会社の財産は自分のものではないと考えている。

中国は内陸部と沿海部で経済格差が大きいので社会不安になると言われる事があるが、とんでもない。華人ネットワークは内陸部にも繋がっており、貧困救済プログラムで資金が奥地へと移動している。この所得移動で貧困が救済された人々が459万人もいる事が確認されている。香港で働いている中国人は収入の80%を郷里へ送金している。中国分裂論者はこのような事実を知らないのだろう。

◇中国人は“人情“(レンチン)をとても大事にする

華人ネットワークが中国内陸部に資金を提供し続けるうちに“人情“(レンチン)が発生し、”縁“を持つようになる。このような関係になるまでにはかなり長い時間が必要となる。中国人は物の遣り取りをするうちに“人情“(レンチン)が発生し、”縁“がある人間関係へと深める過程を経る。

日本人の人間関係と中国人の人間関係を図示すると次の通りとなる。

◇中国人は個人主義か集団主義か?

両方の顔が見え隠れする中国人、中国の歴史学者である余英時は中国人の中には個人主義と集団主義の両方存在し、Situationによって変わると説いている。例えば家族の場合は集団主義で会社の場合は個人主義を取る。

これは人格の同心円で説明される。大きい円が“大我”小さな円が“小我”となる。中国人は“小人“(しょうじん)は利を求め”君子“は徳を求める存在と位置づけており、自らを何とか自分を”君子”に見立てようとし、“君子”の振りをしたがっている。だが、その実態は「みんな君子になりたがっているが、ほとんどは小人」なので、誰が自分にとって君子で誰が小人か見かけだけでは判断が付かなくなってしまっている。それが、中国人同士でも不安と不信を抱いている原因となっている。

教養があって認められた人物になりたい。そうすると良い職が得られる。徳の高い人が高い地位につく。徳は結局のところ実利と結びついている。一番徳の高い人がどんな人なのかは胡錦涛氏(中共中央委員会総書記、中国国家主席)の事だとでもイメージすると分かりやすい。

中国人同士でも誰が本物の君子か分からないので警戒心を持つ。相手が君子かどうか確認してから付き合い始めなければならない。このような確認作業は日本では必要ない。こう言う事を指す“先小人、後君子”。(最初は警戒してわざと小人のようにふるまい相手の様子を見てから確認してから君子の付き合いなる。)という言葉があるくらいだ。

◇会社が虚像で関係が実体

会社では中国人は“私”を優先させる。会社が必要としているから働くのではなく自分の好きな上司の為に働いているのである。会社は虚像と思っている。

そのため中国の会社では上司が自分の部下が自分のために働くかチェックしている。わざわざ自分の親戚を職場に配置し見張る会社すらある。

◇ギフト文化

中国はギフト文化なので何か貰ったら必ずお返しをしなければならない。物の遣り取りを繰り返すことで“人情“(レンチン)の密度は高まり太くなる。中国人は相手と自分のバランスシートを持っており、自分に良くしてくれたら必ずそのお返しをする。お返しをしなければ耐えられないというプレッシャーを感じる。

中国人の対人関係を示す言葉で関係の度合いが “外人”(ワイレン)、“熟人”(シュウレン)、“自己人”(ツーチーレン)の順番に濃くなる。“自己人”(ツーチーレン)になるまで中々容易ではないが、時間をかけて“人情”(レンチン)と“縁”を作っていく事が中国ビジネス成功の方法と言える。

そのためには同じ人が長期間担当しなければならないし、中核となる事業を中国で行なう必要がある。その意味では人事異動で腰の落ち着かない大企業では中国ビジネスは成功しがたい。むしろ、中小企業に勝算があると考えている。

アメリカにくっついても一緒に沈没するだけ、中華共同圏で共存共栄を図るべきである。

(By拙速で候)

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