第72回香港和僑会


第72回

佐藤 實氏

第72回香港和僑会

開催日

7月22日(金) 19:00 ~ 21:30

開催場所

日本人倶楽部

参加者数

30名

第72回香港和僑会

プログラム

<第一部> 

【上司が抱える悩み】について

パネリスト(高岡光男氏、川崎友也氏)より各10分の質問

講師(佐藤實氏)よりそれに対する回答

<第二部>

『モチベーションはエンジン、如何に点火させるか!

行動科学の応用事例に学ぶ』

佐藤實氏による講演

<第三部> 

部下の心を掴む寺子屋塾

匿名にて部下の悩みなど佐藤講師に相談(白紙を配布)

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<第一部> 

【上司が抱える悩み】について

○高岡氏による質問

第一問

Q.(高岡氏)

香港では、基本的に会社、社員の双方から解雇、退職の通知後、退職までの期間は1か月。実際のところ、1か月という短期間での引継ぎというのは非常に難しいもの。

交代要員として、余剰人員を常に抱えておかねばならないものなのでしょうか?

A.(佐藤講師)

どのような企業においても、引継ぎ期間が1か月というのは、不十分な場合が多い。

辞める人は会社に対して未練などはなく、どれだけ資料を持って帰るのかなど、自分のことを考えることが多いのではないでしょうか。

この場合、解雇、退職の1か月間が問題というよりも、必ず同じ業務を理解しているスタッフが複数いるなど普段からの体制づくりが問題だと言えます。

Q.(高岡氏)

採用の際、事前に業務内容(仕事の範囲)を説明の上雇用している関係上、ほかの人の仕事を同時進行でサポートするなどが難しい。

「その仕事(他人の仕事)をするのなら、給料UPを」などと言われることも・・・。

A.(佐藤講師)

単に、仕事をお願いするというのではなく、仕事をお願いする人にとって、これが将来のキャリアに必要な過程となるなど、いかに「あなたにとってこの仕事が肥やしになる」のかということを意識づけるところが重要です。

Q.(高岡氏)

普段からの人間関係が重要ということですか?

A.(佐藤講師)

その通りです。

「あなたが言うのならやらない。」から「あなたが言うんだったらやるよ。」

という文化をつくることが大切です。

Q.(高岡氏)

言葉の壁もあり、心からのコミュニケーションが難しいのですが・・・。

A.(佐藤講師)

昔、工場で行われた実験で、「ホーソン実験」というのがあります。

【照明をどんどん明るくすれば、生産性が上がるか?】という実験です。

実際に照明が明るくなれば、生産性も上がるという結果が得られましたが、

逆に暗くしても、生産性が下がるかを試したところ、結果としては、生産性は下がりませんでした。

なぜならば、それは照明の明暗に関わらず、この実験を行うにあたり、「自分が選ばれた。人に注目されているのだ。」というやりがいが、生産性を上げたというものです。

見られている、注目されているということがやりがいモチベーションへとつながります。

モチベーション向上については、これだけではありません。

多くの方法のうちの一つとしての提案です。

(高岡氏)

ありがとうございました。

第二問

Q.(高岡氏)

絶対に自分の非を認めないローカルスタッフにたいして、素直に認めさせる方法はないでしょうか?

問題の根本が見えず、結果として、解決策、改善策がなかなか見つからないのですが・・・。

A.(佐藤講師)

非があるのかないのか、というのを追及しているのではなく、現状何が起きているのかを把握をすることをしているのだと認識してもらうことが大切です。

Q.(高岡氏)

日本人同士であればできそうですが、

香港人、中国人などの場合は、「私のせいではない」ということを強調し続けるだけなど、特にそこにフォーカスしたリアクションが激しいのです。

A.(佐藤講師)

問題が起きたら、「自分のせいでない」ことをアピールするというのがこちらの文化。

こうした問題解決も、普段からのコミュニケーションが鍵になります。

第三問

Q.(高岡氏)

職場の雰囲気の浄化について。良質な社員悪質の社員が混在する中で、どうすれば良質の社員だけにすることができるのでしょうか?

A.(佐藤講師)

良質悪質の判断は不明確ですが、少なくとも同じ方向に向かっていける社員であることが大切。同じ方向であれば、違った意見が出ても問題ではありません。単に異質な意見となります。

社員に意識変革を求めるのであれば、「いかなる場合もビジョンをもって発言するべきである」と教育することが必要となります。

Q.(高岡氏)

ビジョンなど関心がなく、「私はこの仕事だけよ」という人も多いが・・・。

A.(佐藤講師)

組織目標を明確にし、それをいかに達成するために何をするかというのを順序立てて説明し、理解させること。お互いにベクトルを合わせるという作業。つまり、「わかり合う」というのが大切です。

Q.(高岡氏)

それは会社の規模に関わらず同じですよね?

それさえできれば、社長が何も言わなくても結果として社員がおのずと動くことになるのですか?

A.(佐藤講師)

かなりそれに近くなるでしょう。

そのためには、全社員にビジョンと作業がいかに関連づいているかを認識してもらう必要があります。

○川﨑氏による質問

第一問

Q.(川崎氏)

特別待遇を求めてきた従業員に対して。

現在別のところで務めているマネージャークラスをヘッドハンティング。現状より上の好待遇で引き抜きすることになったが、さらに「シックリーフ(病欠)」を認めてもらえないかと申し出があった。

こちらでは、法規に準ずるつもりだが、月に1度の「シックリーフ(病欠)」までは認める必要がないのではないかと思う。

引き抜きをした関係上、モチベーションを下げずに、彼からの要求をうまく取り下げたいのですが、いい言い回し、いい方法はありませんか?

※「シックリーフ(病欠)」とは

医師の診断書があれば、病気欠勤の場合は、有給休暇とするもの。導入されている企業もあるが、特に法律として定められたものではない。

A.(佐藤講師)

まず、はじめに、この要求の背景を聞くべきです。「うちの会社はこうだから」という会社にとっての正論やルールを主張しても、背景を聞くことなく、本人の気持ちを無視してそれだけを主張してしまっては、心を傷つけてしまうという場合があります。

なぜ、そのような提案が出てきたのかというのを聞いてみましょう。

もともと持病があり、どうしても病院に通う必要があるのか。

他の人がシックリーフ待遇をもらっているからほしいと思っているのか。

その背景を確認すること。まず、第一段階としてはそれが大切です。

Q.(川崎氏)

病院に検査に行くことがあるのは、理解できますが、月曜から金曜までの週5日勤務なのであれば、土曜日に行けばいいのではないかと思う。

A.(佐藤講師)

基本的に「あなたのことを想っている。心配しているよ。」という姿勢が大切なのです。

「気にかけているから、そういうことを(なぜシックリーフがほしいのか)を聞のだ。」

我々は、対等な立場、上下の関係ではないというのが大切な基本姿勢です。

香港人は、親を非常に大切にし、親の言うことをよく聞きます。

ご両親のことまで気にかけ、心配りをしていれば、「お前の会社はいい会社じゃないか!」と親が言ってくれるようにもなります。こうした文化に沿った心配りも必要ではないでしょうか。

第二問

Q.(川崎氏)

業務内容として、梱包作業、入力作業などのきわめて単純な作業があります。

仕事内容の関係上、給料はさほどでもなく、面白みもないのでは?と思います。

こうした場合、どうやって、働き手のモチベーションを保ち続けるのかを教えてください。

今考えているのは、一つ梱包するごとにコミッションをつける、月に何度かは会社で会食をする。などですが・・・。

A.

給与や手当には手を付けないというやり方がいいでしょう。

人参をぶら下げたら走る馬というケースでは、うまくいった事例が少ないもの。

こうした仕事を行う人にとって、高望みはしないが、作業はつまらないというのが実際のところ。

そのつまらない気持ちをいかに楽しいにするのか、がポイントでしょう。

たとえば、1日に何度か現場に行き、「これ、いいじゃない!」という声をかけるなど、「私は注目されている」という実感をもってもらうこと。

どのような仕事内容であっても、われわれは同じ目標に向かって進む仲間であるということを認識してもらうことが大切でしょう。

第三問

Q.(川崎氏)

解雇について。

解雇をしたい人がいますが、解雇までの1か月間、責任を持って仕事を引き継いでほしいのですが、どのように解雇通知を行えばいいでしょうか?

A.(佐藤講師)

解雇される人は、モチベーションではどうしようもならなりません。

1か月もいたくないというのが実際のところでしょう。

会社から、何とかお願いします。1か月引き継いでください。という姿勢で、きちんとスケジュールを組み、余力があれば、次の手段として、次のステージで役に立つ何かによって、モチベーションを上げるということもあり得ます。

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<第二部>

『モチベーションはエンジン、如何に点火させるか!

行動科学の応用事例に学ぶ』

■「モチベーションはエンジン、如何に点火させるか!行動科学の応用事例に学ぶ」

■3月11日に起きた東日本大震災に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。また犠牲になられた方々に深く哀悼の意を表します。地震、津波、原発が連鎖的に発生し大きな災害をもたらし、被災地の状況を見聞きする度に、心が裂け、涙します。国難ともいえる状況に、私も自分なりの使命感をもって立ち向かい、支援を行って参ります。

■本日のこの会場に関係者がおられましたら、決して屈する事無く、将来を悲観せず、かといって楽観しすぎず、和僑会と共に頑張って生きて行きましょう。故松下幸之助氏は「こけたら、立ちなはれ!立ったら、歩きなはれ!」と言って常に新たな一歩を踏むことを指導されたそうです。

■21世紀に入り、多くの企業は、「企業の使命」とは何かを問い直しております。日本の商法に照らし合わせ、企業は利益を上げ、税金を納めるのが最大の使命であり、それが社会への貢献であるかのように言います。多分その言い分は一方で正しいのでしょう。

□しかし、そうした利益一辺倒の考えが、ライブドア・カネボウ・日興コーディアルなどに見られる粉飾決算による利益確保、三菱自動車・不二家・雪印などに見られる違法の隠蔽による経費の削減を生むなど、企業倫理を失わせている根源ではないでしょうか。又、日本人の14%~25%はうつ病であるという統計もあり、俗に言う大企業病の発症は、働く社員の心深くまで蝕(ムシバ)むようになり、こうした企業の成長プロセスが影響しているのではないか、又はなんら関係の無いことなのか疑問を覚えます。

□会社で一生懸命働いてきた挙句の果てが、荒廃した社会を作っているのかも知れないと、目を覆いたくなる状況に悲しみを覚えます。

■そうした中で起きた、東日本大震災は、悲しい出来事ではありますが日本人のあり方を真正面から見直すキッカケを私達に与えました。海外のメディアはこぞって、世界の何処にも存在しない奥行きのある感動的日本の道徳を一斉報道しました。それは過去からズーと受け継がれてきた、日本人の普通の行為です。他人に迷惑をかけてはいけない、

だから、どんな災害に遭遇しても、日本人は列を作って並ぶ。ある韓国人は、日本で最初に習った言葉は、「順番」でした。幼稚園の時、滑り台で遊ぶ時に、順番、順番といって子供達は列を作るのです。

 中国の報道は、日本人のこうした行為に対し、中国では50年後も、こうした日本人の素晴らしさを手に入れることはあり得ないと言い切っております。

□特に顕著なのが、青信号になるまで、ジッと待つ歩行者の遵法精神や、地震発生時にウドンを食べていた若者が、一旦外に逃げたものの、御代を支払う為に戻ってきて列に並ぶ正義感です。

 こうした情景を見た世界の人々は、どんな困難な試練にも、平静心を失わず、相互に助け合い、自助努力との調和を保ち礼儀を守った行為に大きな感銘を受けたのです。困難な時に問題を解決するだけでなく、とっても大切な見本を示した日本人の連帯感に、将来の復興に立ち向かうことを可能にする、モチベーションを垣間見ることが出来ます。

■では、本日のテーマであります「モチベーションはエンジン、如何に点火させるか!行動科学の応用事例に学ぶ」について、皆さんと一緒に考えて行きたいと思います。

■ある行動科学者が幼稚園児に次の実験を行いました。幼稚園児は絵を描くのが好きで毎日沢山の時間を使って楽しそうに絵を描いていました。その幼稚園児を3つのグループに分け、それぞれどういう行動を起こすか観察いたしました。

■1つ目のグループには、良い絵を描けたらご褒美をあげると約束しました。そして実際にご褒美を上げたのです。2つ目のグループには、ご褒美のことは告げずに、良い絵を描いた後に、絵を褒めてご褒美をあげました。3つ目のグループには、ご褒美のことは告げずに、ご褒美もあげませんでした。さて、この実験でどういう結果が得られたでしょうか。

■皆さんの経営と全く同じ状況をイメージして考えてみて下さい。1つ目のグループには、成績の良い社員には報酬を約束して、その通りに報酬を与えます。2つ目のグループには、報酬は約束しておりませんが、結果を見て報酬を与えます。3つ目のグループには、仕事の結果には報酬は一切与えません。この幼稚園児の行動は、皆様経営者に対して大きなヒントを与えてくれます。

■およそ2週間の実験で得られた結果ですが、1つ目のグループは、絵を描くことを止めてしまったのです。ご褒美を貰っていた幼稚園児が絵を描くのを止めました。

□止めたというより、どういう絵を描いていいのか困惑してしまって、遂には絵を描くことが出来なくなってしまったのです。2つ目のグループと3つ目のグループは絵を描き続けました。