第8回 起業塾

タイトル

第8回 起業塾

開催日時

5 月 09 日 (土)

内容

起業とは「掛け算の世界」に入るということ

誰しも『何のために起業するのか』については悩むものです。

しかし率直に言って、やはり「お金が欲しい」という動機は、起業を目指す人たちのほとんどに共通ではないだろうか?今回はいよいよお金の話だが、大体どういうことかというと…

先だっての定例会でも少し話したように、サラリーマン時代の金銭感覚と、起業後の金銭感覚は全く異なるということ。特に、ある程度の成功を収めたケースではそのことが非常に強く出てくる。サラリーマン時代の金銭感覚は、すべからく足し算と引き算で成り立っている。

しかし起業して、それなりの成功を見た後は、それが「掛け算」になるということ。僕もこのことが判っていなくて、気が付いたのは何と起業後40年くらい経ってからであった。実は、この部分に起業における金銭面の魅力の大部分があるので、起業する・しないに関わらず、お金のどうやってつかむかは知っておいた方が良い知識だと思う。

① 結論を先に言うと、起業における最終目的はいろいろあるが;

少なくとも「いかにして自分の財布をお金で一杯にするか?」ではない。サラリーマンの時代には、まず自分の受け取っている毎月の給料があって、12ヶ月でどれ位になるか、暗算でも計算できる金額がまず浮かび上がってくる。それにいささか変動的なボーナスというものが加えられ、両方の合計が1年間の収入の全てである。年間の給料アップ率は、このところずーっと低い状態が続いてきたが、これからもそれほど大きくは上がらないと考えられ、収入を増やそうとすると、同僚を蹴落としてでも良い成績を上げ続けるというのが、ほとんど唯一の収入増加作戦である。そして、収入から、必要経費を引いて行くと、残りはどんどん減って行く。しかも、若い時には自分のことだけを考えていればよかったものが、ある年齢、特に結婚してからは相手のことも考えなければならなくなる。そして子供が生まれると、その子たちを育てるための経費、そして教育にかかる経費と、資産の増加に回せるお金はどんどん少なくなっていく。そして、中年を過ぎるころから、自分または配偶者の親たちのことも考えなくてはならなくなる。そのようにして、最後に残ったお金が預貯金に回され、その人の資産の大部分となる。むかしは厚生年金とか、若い時に入った生命保険なども資産の一部として予定できたが、ぼくが28歳で結婚した時に家内を受取人にして入った死亡保障150万円の生命保険、56か57歳くらいの時に満期となり、もらったのが、160万円くらいだった。保険に入ったころの150万円は、ぼくの3年分の収入に相当したが、もらった時は3ヶ月分以下になっていたというのが真相。今の保険、随分進化しており、そういうバカなことにはならないようだけれども、一つの真理があるとすれば『多く払えば多くもらえる』ということで「少なく払ってたくさんもらえる」というようなことはまずないのだ。そして厚生年金、今は年金が予定通りもらえるかどうかがヤバくなってきているわけで、政府がやっていることだからと言って、100%信用できるものでもないらしい。そんなこんなで、一体どれくらいのお金が毎月残り、そしてその12回分が毎年残って行くのだろうか?そういう風に考えてみると、かなり悲観的になってくる。その一番大きな理由は、収入があって、そこから使う必要のある金額を引いて行って、残ったお金を12回分足したものが1年間に作れる資産。それをさらに10倍、20倍または30~40倍足したものが一生かかって作れる資産という点にある。その資産を銀行の預けておいても、25年間も続いている低金利の時代には、金利がほとんど付かないから増えないのだ。1億円を銀行の定期に預けておいても年間に受け取れる金利は15万円程度。日本国債を買っても、利息は年間35万円程度である。したがって、どんなに一生懸命働いても、会社の中で出世の階段を人より早く登れるということはあっても、大きな資産を築くことは不可能というのが、現代社会である。言い換えれば、極端な「格差社会」になっているのである。

一流会社の社長クラスでどのくらいの資産が作れるのか?

そこそこの会社(1部上場企業)の社長を務めて年俸一億円もらうと、手取りは5000万円程度だ。一部上場会社の社長だと、月々の生活経費は200万円くらいだろう。年間で2400万円。すると残りは2600万円だが、社長は一般的に4年程度が多く、それ以上の任期を務めようとすると、相当の成績を残さないと継続はできない。(中には10年以上もやっている人もまれに居るが)4年間毎年2600万円の貯金ができるのだから、辞める時までに1億円強貯まることになるが、その程度だということ。地方ならともかく、東京では大した家も買えない。勿論、社長になるまでに、ある程度の貯金はできるだろう。しかし、それでも総額はそんな大きな金額にはならないので、人生80年、90年の時代を生き続けるには、それほど十分だとは言えない。結局は足し算の世界の限界にぶち当たってしまうことになる。

それでは、「起業してお金をたくさん儲けたい」と考えるなら、何をどうすれば良いのか?という最初の質問に戻るが、正解は自分の会社から多くの給料を取ることではなくて、いかにしてその会社の「企業価値」すなわち「自分の会社のVALUE」を最大にするか?と言うこと。ということは、その価値は間違っても万、10万、100万の単位ではなくて、最低でも~千万、通常は何億、何十億の世界である。それ以上の世界も無限にあるが、そういうレベルに首を突っ込むには、単にアイデアが良かったとか、一生懸命働いたといったことだけではたどり着けない世界で、通常はそういう一般的要素プラス「イノベーション」「斬新なビジネスモデル」、更に「ツキ」とか「よきパートナー」といったことも備わっていないと達成できない。しかし、この世の中には、大成功した人たちがゴマンといる。彼らは莫大な給料を会社から取って、金持ちになったのではない。「企業価値」を高めることによって、そしてそういう企業を売却、または上場(I.P.O)することによって大資産家になったのだ。

「為せば、成る」という言葉がある。これをどのように実践すれば良いのか? 問題は、成功の仕組みを理解することだ。それは、はっきり言ってしまうと、決してそんなに難しいものではない。

まず、自分でやることを決断する→何をやるか考える→顧客・ユーザーにどのように喜んでもらえるのか?自分とは反対の方にいる人たちのことを考える→ビジネスプランに取り掛かる→パートナーを探す→必要資金を計算する→資金の目途をつける→GO! これが全てである。

どこが難しいのか? おそらく、一番最初の「やることの決断」が難しいのでないのだろうか?要は「自信が無い」ということになる。しかし、いくら待っていても、絶対うまく行きそうなアイデアやそのチャンスを与えてくれるような奇特な人は現れない。「自分でやる」この一番最初の部分で、ほとんどの人がストップしてしまうのだ。

②「やることの決断」は、「自分で起業しよう」ということであるが、もう一つの考え方は、「起業しようとする人・仲間に加わってみよう」である。一人で起業したとしても、ごく短い期間のうちに、一人では大したことは何もできないということが判り、「パートナーが必要だ」と思うケースが非常に多いものである。。理想的なパートナーは、起業家とは違った才能・得意技を持った人であると一般に言われている。興味が持てる起業家をしっかり分析して、その得手/不得手が理解できれば、自分が彼(彼女)をアシストできるかどうかはわかる。「起業家」を目指すのではなくて、誰かの「パートナー」を目指すというアイデアは、悪くない。起業は自分で立ち上げることがすべてではない。起ち上げようとしている人に加わることができれば、その後はまさに「起業」に必要な仕事と、それに見合った収入が待っているのだ。ただ、自分の持っている何か、それは資金力か、自分が得意とする分野の才能か?多くの人に信用があることか?そういったことがどれだけ自分に備わっているのか?を考えてみる必要がある。

③ 企業価値を計算するための「完全な方程式」はない。理由は、企業は生き物なので、昨年の状態と、今ではずいぶん違っていると言って良いし、ひどいときには先月と今月で価値がずいぶん違うということもある。したがって、4月~翌年3月を会計年度とする会社の場合、3月末決算が確定し、決算書が出てくるのが通常6~7月だとすれば、そこに出てくる数字は2~3ヶ月前の状態を見ていることになる。そこで、いくつかの計算式を使って、経験則的な判断で企業価値を計算し、その上で「価値計算に使った使った基準値の時期から今日まで、あまり大きな変化がないことを前提として、この会社の企業価値は~円であると考えられる」という形になる。

④ Net Asset(Value) または Net Worth = 純資産 (以前は「自己資本」「株主資本」とも呼ばれていた)簿記における勘定科目の区分の一つである。会社の資産総額から負債総額を差し引いた金額を指す。 なお、額がマイナス(欠損)であっても「純資産」と呼ぶ。純資産を株数で割ったものがその企業の会計学的見地(市場のセンチメントが入っていない)に立った株価である。その株価に、発行済み株数を掛けると、時価総額となり、それがその時点におけるその企業の価値である。そこには将来性や、市場が感じている新しい商品・サービスなどへの期待感などは一切反映されていない。したがって、これがその企業の現状を最も正確に表しているということになるが、一つの指標としてこれを見ることはあっても、現在のビジネスの世界では、これを以て企業価値とする考えは余り無いと言って良い。

⑤ PE:Profit Earning=株価収益率は、株価を一株当たり当期純利益で割ったものであり、次の式で求められる。

株価収益率 = 株価 ÷ 一株当たり当期純利益

  15.0  $75   $50

アメリカ合衆国ではP/EないしPEと表記するのが一般的。頭字語をとった略称のPERは日本にて用いられている。なお、この数値は株価が毎日市場で決定されることのない、非上場の会社には適応しにくいという難点がある。

1株の金額(額面) =$1.00

発行済み株数   =1,000,000株

資本金:     = $1,000,000

過去3年の平均利益=$5,000,000

PER = 15.0 → M.Korsの場合、NYSE上場時にPER42.0が付いた

市場株価 = $75.00/株 (5,000,000 x 15.0 ÷ 1,000,000(株) = 75)

時価総額 = $75,000,000 ($75/株 x 1,000,000株)

株主の側から見れば「利益が全て配当に回された場合に何年で元本を回収できるか」という指標として見ることができる。一方企業の側から見れば、「株主からの出資をどれくらいの利回りで運用しているか」という指標の逆数と見ることができる。

また時価総額を当期純利益で割ったものと言い換えることもでき、次の式で求められる。

株価収益率 = 時価総額 ÷ 当期純利益

15.0 $75,000,000 $5,000,000

25.0  $75,000,000 $3,000,000

市場はこの情報に反応し、株価は下落する→$35/株

11.7 $35,000,000  $3,000,000

最後のケースの場合、この会社の株を買って、会社がこの程度の利益を出し続けるとした場合、投資の回収には11.7~15年かかるという計算になる。しかし、実際にはその企業の将来性などを考えれば、会社の売り上げ、利益ともにもっと伸びると思うからこそ、そういう会社の株を買うわけだから、実際には投資の回収に12年近くもかかっても、文句は言えない。指標的には、そういう株を買ったわけだから。また、利益が減ると、株価収益率は高くなることとなる。一般に株価収益率が業界平均値と比較して高いときは、当該企業の株価は割高とされ、何か特別な理由がないと、株価は下落することが多い。ごく一般的な意見として、株の世界では、P.E.が14.0辺りを超えると、P.E.が高すぎると言い、8.0以下だと、P.E.が低いという。

上場していない企業の場合、市場が毎日決めてくれるPEも時価総額もないので、PEの計算が少し難しくなる。そこで、過去3年間程度の平均利益を算出し、その金額に妥当と思われるPE(経験則から割り出されることが多い)を掛けて計算されるケースが多い。例えば、上記のチャートなケースで、過去3年間の純利益が$10,000,000である場合、PEは7.5となるが、そのPEは誰が見ても低すぎるという印象がある。そうすると、低すぎるなという判断が働き、常識的数値として10.0~15.0だが、場合によっては25.0~30.0といったPEが妥当という判断になり、市場で株価が上方修正される。非上場企業ではそういう市場のメカニズムが働かないという難点がある。

⑥ EBITDA:Earning Before Interest, Tax, Depreciation and Amortization

日本語訳:「利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益」あるいは「金利・税金・償却前利益」などとなるが、訳語が定まっていないため「EBITDA」と表記されることが多い。「EBITDA」の読み方も、「イービットディーエー」、「イービットダー」、「エビータ」などが用いられ、一つではない。

こちらも計算は「PE」と同様で、企業規模、算出された利益額の大小、将来性等を加味して6.0~20.0くらいの数値を掛けて企業価値とする。掛ける数値をいくらに設定するかで、大きな違いが出るわけだが、そこには将来性に対する過度の期待感、会社に対する思い入れ等が入り込むので、やはり最終的には経験則がものをいう世界であるようだ。

⑦ 吉岡会員の「i CRIMERIA」の場合

2014年12月16日にオープンしたアイスクリーム(ソフトクリームとフルーツ)の店であるが、果物はすべて日本からとこだわり、「和」の甘いものをうまくメニューに取り入れてたので、大変な人気となった。この会社のP.E.を計算し、企業価値を算出すると3000万ドル以上という数字になる。

開業からたったの12ヶ月で、その会社を3千万香港ドル(4億5千万円)またはそれ以上で売れる!ホントかよ!しかし、これが現実なのである。日本の一部上場会社の社長が4年間で貯めると思われる金額を、はるかに上回る利益(4.5倍以上)をたった1年で叩き出せる。これこそ起業の醍醐味といって良いだろう。その原因は、企業価値の部分で使われる掛け算にある。

この計算、利益の出ていない会社のP.E.はゼロになるので、企業価値も理論的にはゼロとなる。しかし、会社というものは、何かしら良い部分があって、そう簡単に価値がゼロにならないので、上場企業でも、赤字が続いても株価は下がりこそすれ、ゼロにはならない。

大体、i Crimeriaのようなケースはまれで、一般的にはぼく自身のケースも含めて、かなり長期にわたる「苦しい時」が続くのが普通。でもそういう状態をずーっとこらえて「生き延びた」人は、かなり高い確率で報われるものだと思って良いだろう。要するに、「チャンスは必ず来る」ということ。そういう風に信じておれば、「我慢して食いつないで行くこと」はそんなに難しいことではない。なぜなら、人間、我慢している時にはいろんな知恵がつき、経験も積み上げて行けるから。チャンスが来た時に、そういうものが一気に花開くのである。

⑧ 和僑キャピタルについて

現在は香港和僑会の会員にのみ利用可能なベンチャーキャピタル、即ち「起業を支援するためのエンジェル」である。その仕組みを簡単に言うと;

- 「起業相談室」を通して、独立のための起業プランを起業家と一緒に検討し、必要と思われる変更、追加事項等を組み込んだのち、その事業を立ち上げるための必要資金量(資本金)を計算する。案件の提案者がその金額を自分の資金で賄える場合は、和僑キャピタルの出番はないが、もし賄いきれないというケースについて、必要資金の49%まで和僑キャピタルが出資する。

- 和僑キャピタルは銀行ではなくて投資会社なので、資金を貸し付けることはできない。出資をする。

- 事業が軌道に乗り、安定的に利益が出るようになったら、和僑キャピタルはその出資比率に応じて配当金を受け取る。

- 事業がさらに拡大した場合は、I.P.O.を実行し、香港の株式市場に上場することになる。その場合、和僑キャピタルの保有する株式は、かなり大きな額になることが予測でき、和僑会の財政を楽にすることになる。

- 何人もの起業家が、複数でI.P.O.にまで進んだ場合、香港和僑会は自分の力で「和僑ビル」を持つことも可能になるだろう。

⑨ 起業クラブの結成

目的: もっと踏み込んだ「起業」へのアプローチ、特に過去の成功者の軌跡をたどることによって、これまでの企業の成功例をもう一度検証する。その上で、自分は何をどうするのか?一緒に検討する。即ち、ビジネスの「ネタ」を探す作業をすると言っても良い。形式的には、5~8名くらいの人数で「ブレーン・ストーミング」形式でやりたい。出てきたアイデアで秀逸なものについては、和僑会に所属するものとし、それを