第8回起業塾 起業とは「掛け算の世界」に入るということ

誰しも『何のために起業するのか』については悩むものです。

しかし率直に言って、やはり「お金が欲しい」という動機は、起業を目指す人たちのほとんどに共通ではないだろうか?今回はいよいよお金の話だが、大体どういうことかというと…

先だっての定例会でも少し話したように、サラリーマン時代の金銭感覚と、起業後の金銭感覚は全く異なるということ。特に、ある程度の成功を収めたケースではそのことが非常に強く出てくる。サラリーマン時代の金銭感覚は、すべからく足し算と引き算で成り立っている。

しかし起業して、それなりの成功を見た後は、それが「掛け算」になるということ。僕もこのことが判っていなくて、気が付いたのは何と起業後40年くらい経ってからであった。実は、この部分に起業における金銭面の魅力の大部分があるので、起業する・しないに関わらず、お金のどうやってつかむかは知っておいた方が良い知識だと思う。

① 結論を先に言うと、起業における最終目的はいろいろあるが;

少なくとも「いかにして自分の財布をお金で一杯にするか?」ではない。サラリーマンの時代には、まず自分の受け取っている毎月の給料があって、12ヶ月でどれ位になるか、暗算でも計算できる金額がまず浮かび上がってくる。それにいささか変動的なボーナスというものが加えられ、両方の合計が1年間の収入の全てである。年間の給料アップ率は、このところずーっと低い状態が続いてきたが、これからもそれほど大きくは上がらないと考えられ、収入を増やそうとすると、同僚を蹴落としてでも良い成績を上げ続けるというのが、ほとんど唯一の収入増加作戦である。そして、収入から、必要経費を引いて行くと、残りはどんどん減って行く。しかも、若い時には自分のことだけを考えていればよかったものが、ある年齢、特に結婚してからは相手のことも考えなければならなくなる。そして子供が生まれると、その子たちを育てるための経費、そして教育にかかる経費と、資産の増加に回せるお金はどんどん少なくなっていく。そして、中年を過ぎるころから、自分または配偶者の親たちのことも考えなくてはならなくなる。そのようにして、最後に残ったお金が預貯金に回され、その人の資産の大部分となる。むかしは厚生年金とか、若い時に入った生命保険なども資産の一部として予定できたが、ぼくが28歳で結婚した時に家内を受取人にして入った死亡保障150万円の生命保険、56か57歳くらいの時に満期となり、もらったのが、160万円くらいだった。保険に入ったころの150万円は、ぼくの3年分の収入に相当したが、もらった時は3ヶ月分以下になっていたというのが真相。今の保険、随分進化しており、そういうバカなことにはならないようだけれども、一つの真理があるとすれば『多く払えば多くもらえる』ということで「少なく払ってたくさんもらえる」というようなことはまずないのだ。そして厚生年金、今は年金が予定通りもらえるかどうかがヤバくなってきているわけで、政府がやっていることだからと言って、100%信用できるものでもないらしい。そんなこんなで、一体どれくらいのお金が毎月残り、そしてその12回分が毎年残って行くのだろうか?そういう風に考えてみると、かなり悲観的になってくる。その一番大きな理由は、収入があって、そこから使う必要のある金額を引いて行って、残ったお金を12回分足したものが1年間に作れる資産。それをさらに10倍、20倍または30~40倍足したものが一生かかって作れる資産という点にある。その資産を銀行の預けておいても、25年間も続いている低金利の時代には、金利がほとんど付かないから増えないのだ。1億円を銀行の定期に預けておいても年間に受け取れる金利は15万円程度。日本国債を買っても、利息は年間35万円程度である。したがって、どんなに一生懸命働いても、会社の中で出世の階段を人より早く登れるということはあっても、大きな資産を築くことは不可能というのが、現代社会である。言い換えれば、極端な「格差社会」になっているのである。

一流会社の社長クラスでどのくらいの資産が作れるのか?

そこそこの会社(1部上場企業)の社長を務めて年俸一億円もらうと、手取りは5000万円程度だ。一部上場会社の社長だと、月々の生活経費は200万円くらいだろう。年間で2400万円。すると残りは2600万円だが、社長は一般的に4年程度が多く、それ以上の任期を務めようとすると、相当の成績を残さないと継続はできない。(中には10年以上もやっている人もまれに居るが)4年間毎年2600万円の貯金ができるのだから、辞める時までに1億円強貯まることになるが、その程度だということ。地方ならともかく、東京では大した家も買えない。勿論、社長になるまでに、ある程度の貯金はできるだろう。しかし、それでも総額はそんな大きな金額にはならないので、人生80年、90年の時代を生き続けるには、それほど十分だとは言えない。結局は足し算の世界の限界にぶち当たってしまうことになる。

それでは、「起業してお金をたくさん儲けたい」と考えるなら、何をどうすれば良いのか?という最初の質問に戻るが、正解は自分の会社から多くの給料を取ることではなくて、いかにしてその会社の「企業価値」すなわち「自分の会社のVALUE」を最大にするか?と言うこと。ということは、その価値は間違っても万、10万、100万の単位ではなくて、最低でも~千万、通常は何億、何十億の世界である。それ以上の世界も無限にあるが、そういうレベルに首を突っ込むには、単にアイデアが良かったとか、一生懸命働いたといったことだけではたどり着けない世界で、通常はそういう一般的要素プラス「イノベーション」「斬新なビジネスモデル」、更に「ツキ」とか「よきパートナー」といったことも備わっていないと達成できない。しかし、この世の中には、大成功した人たちがゴマンといる。彼らは莫大な給料を会社から取って、金持ちになったのではない。「企業価値」を高めることによって、そしてそういう企業を売却、または上場(I.P.O)することによって大資産家になったのだ。

「為せば、成る」という言葉がある。これをどのように実践すれば良いのか? 問題は、成功の仕組みを理解することだ。それは、はっきり言ってしまうと、決してそんなに難しいものではない。

まず、自分でやることを決断する→何をやるか考える→顧客・ユーザーにどのように喜んでもらえるのか?自分とは反対の方にいる人たちのことを考える→ビジネスプランに取り掛かる→パートナーを探す→必要資金を計算する→資金の目途をつける→GO! これが全てである。

どこが難しいのか? おそらく、一番最初の「やることの決断」が難しいのでないのだろうか?要は「自信が無い」ということになる。しかし、いくら待っていても、絶対うまく行きそうなアイデアやそのチャンスを与えてくれるような奇特な人は現れない。「自分でやる」この一番最初の部分で、ほとんどの人がストップしてしまうのだ。

②「やることの決断」は、「自分で起業しよう」ということであるが、もう一つの考え方は、「起業しようとする人・仲間に加わってみよう」である。一人で起業したとしても、ごく短い期間のうちに、一人では大したことは何もできないということが判り、「パートナーが必要だ」と思うケースが非常に多いものである。。理想的なパートナーは、起業家とは違った才能・得意技を持った人であると一般に言われている。興味が持てる起業家をしっかり分析して、その得手/不得手が理解できれば、自分が彼(彼女)をアシストできるかどうかはわかる。「起業家」を目指すのではなくて、誰かの「パートナー」を目指すというアイデアは、悪くない。起業は自分で立ち上げることがすべてではない。起ち上げようとしている人に加わることができれば、その後はまさに「起業」に必要な仕事と、それに見合った収入が待っているのだ。ただ、自分の持っている何か、それは資金力か、自分が得意とする分野の才能か?多くの人に信用があることか?そういったことがどれだけ自分に備わっているのか?を考えてみる必要がある。

③ 企業価値を計算するための「完全な方程式」はない。理由は、企業は生き物なので、昨年の状態と、今ではずいぶん違っていると言って良いし、ひどいときには先月と今月で価値がずいぶん違うということもある。したがって、4月~翌年3月を会計年度とする会社の場合、3月末決算が確定し、決算書が出てくるのが通常6~7月だとすれば、そこに出てくる数字は2~3ヶ月前の状態を見ていることになる。そこで、いくつかの計算式を使って、経験則的な判断で企業価値を計算し、その上で「価値計算に使った使った基準値の時期から今日まで、あまり大きな変化がないことを前提として、この会社の企業価値は~円であると考えられる」という形になる。

④ Net Asset(Value) または Net Worth = 純資産 (以前は「自己資本」「株主資本」とも呼ばれていた)簿記における勘定科目の区分の一つである。会社の資産総額から負債総額を差し引いた金額を指す。 なお、額がマイナス(欠損)であっても「純資産」と呼ぶ。純資産を株数で割ったものがその企業の会計学的見地(市場のセンチメントが入っていない)に立った株価である。その株価に、発行済み株数を掛けると、時価総額となり、それがその時点におけるその企業の価値である。そこには将来性や、市場が感じている新しい商品・サービスなどへの期待感などは一切反映されていない。したがって、これがその企業の現状を最も正確に表しているということになるが、一つの指標としてこれを見ることはあっても、現在のビジネスの世界では、これを以て企業価値とする考えは余り無いと言って良い。

⑤ PE:Profit Earning=株価収益率は、株価を一株当たり当期純利益で割ったものであり、次の式で求められる。

株価収益率 = 株価 ÷ 一株当たり当期純利益

  15.0  $75   $50

アメリカ合衆国ではP/EないしPEと表記するのが一般的。頭字語をとった略称のPERは日本にて用いられている。なお、この数値は株価が毎日市場で決定されることのない、非上場の会社には適応しにくいという難点がある。

1株の金額(額面) =$1.00

発行済み株数   =1,000,000株

資本金:     = $1,000,000

過去3年の平均利益=$5,000,000

PER = 1